概要

WRI(世界資源研究所)は2026年6月、都市と国家政府が協力して気候行動を推進する「マルチレベル・ガバナンス」が、各レベル単独よりも大幅に高い脱炭素効果を生むことを示した。都市の排出削減の3分の1以上が政府間の協調を必要とし、国家気候計画の80%が現在は何らかの形でマルチレベルガバナンスに言及している(5年前は25%のみ)。

実装ステップ

マルチレベル気候ガバナンスの実装モデル

モデル1:ブラジルAdaptaCidades(都市気候適応プログラム)

  • 2027年までに気候適応計画を持つ都市を22から約500に拡大する目標
  • 国がフレームワーク・資金・技術支援を提供し、都市が地域実装を担う
  • 実装ポイント:国家が「標準化されたツールキット」を開発し、各都市はカスタマイズして適用

モデル2:インドPM-eBus Sewa(電動バス普及スキーム)

  • 中央政府の補助金と地方政府の運営を組み合わせ、18,400台以上の電動バスを展開
  • 実装ポイント:中央政府が「規模の経済」による調達コスト低減を担い、地方が「ラストマイル」の運営を担う分業

モデル3:コロンビア(国家NDCへの都市別目標組み込み)

  • 国家気候コミットメントに都市固有の目標を組み込む制度設計
  • 実装ポイント:都市のデータが国家NDCの一部として国際報告に使われることで、都市の行動が国際的に可視化される

モデル4:メキシコシティProAire(広域大気質管理)

  • 首都圏の複数自治体が協調して大気質目標を設定・達成
  • 実装ポイント:行政境界を超えた問題(大気汚染・交通渋滞・廃棄物)は協調ガバナンスが不可欠

COP28で発足したCHAMP(高野心マルチレベルパートナーシップ連合)

  • 77カ国が署名、国家と都市・州の系統的協力を推進
  • 企業はCHAMP参加自治体との連携強化でGHG削減支援と事業機会を同時に得られる

企業がマルチレベルガバナンスを活用する手順

  1. 自社の重要サイトが位置する都市・自治体の気候計画を確認:都市の再エネ目標・EVインフラ計画・産業脱炭素支援策を把握
  2. 自治体との協働提案:自社の脱炭素投資を自治体の気候計画に組み込んでもらう(例:大規模太陽光を地域の再エネ目標にカウント)
  3. 国家レベルとの整合性確認:国のNDC・GXロードマップと自社の削減計画の整合性を確認し、政策支援が受けられる施策を優先

使うツール・標準

  • CHAMP(Coalition for High Ambition Multilevel Partnerships)フレームワーク
  • C40 Cities気候行動計画テンプレート
  • ICLEI水・都市・気候ネットワーク
  • GHGプロトコル 都市・地域レベルの排出インベントリ基準(BASIC/BASIC+)

成功のポイント

  • 都市は「実装の場」として決定的に重要:世界の排出量の75%超が都市圏由来
  • 国家の規制・資金・技術と、都市の現場知識・市民との近接性を組み合わせることで「実装速度」が劇的に上がる
  • 地政学的緊張によって国際交渉が停滞しても、都市×国家の「コアリション・オブ・ウィリング」が前進できる

日本企業への適用

日本のGX推進では国と自治体の役割分担が重要。企業はZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)推進や再エネ特区活用において、所在自治体の気候計画との整合性を積極的に確認し、自治体のGHG削減目標達成に貢献するプロジェクトとして提案することで補助金・許認可取得のアドバンテージを得られる。