やったこと

2025年5月に成立した改正GX推進法に基づき、2026年度(令和8年度)から開始される排出量取引制度(GX-ETS)第二フェーズの全体像と、対象企業が今すぐ着手すべき実務対応を解説。第一フェーズ(2023〜2025年・自主参加)から義務制度への転換が日本の産業排出削減に与えるインパクトを整理した。

具体的な手順・工夫

第二フェーズの概要

  • 対象:CO₂直接排出量が前年度までの3カ年平均で10万t以上の事業者
  • 対象数:全国で約300〜400社(日本の産業・エネルギー部門排出量の約60%をカバー)
  • 義務内容:GX-ETSへの参加+排出枠の償却(返却)
  • 罰則:義務不履行時は「未履行分×上限価格の1.1倍」のペナルティ

企業に求められるMRVプロセス

  1. Monitoring(算定):政府ガイドラインに基づく詳細な排出量算定
  2. Reporting(報告):毎年度、GX推進機構へ排出実績を報告
  3. Verification(検証):登録確認機関による第三者検証が必須

排出枠の管理ルール

  • 政府から無償割当された排出枠を管理し、毎年度末に排出実績と同量の枠を償却
  • 枠が不足する場合:GX排出枠をGX推進機構の市場で購入、またはJ-クレジット・JCMクレジットを活用(活用上限あり、例:償却義務量の10%まで)
  • 余剰枠は市場で売却して収益化可能

第一フェーズからの変更点

項目第一フェーズ(2023〜2025年)第二フェーズ(2026年〜)
参加形態自主参加法的義務
未達時の措置罰則なしペナルティあり
算定精度自社基準政府ガイドライン準拠
第三者検証任意必須

今すぐ着手すべき実務対応

  1. 自社の3カ年平均CO₂直接排出量を確認し、10万t基準への該当可否を判定
  2. 排出量算定の精度・算定根拠を政府ガイドラインに合わせてアップグレード
  3. 第三者検証機関(登録確認機関)の選定と検証スケジュールの確保
  4. GX推進機構の排出枠取引プラットフォームへの登録準備
  5. 排出量削減投資の優先順位付け(最もコストの低い削減手段から実施)

得られた結果

第二フェーズにより、排出削減は「CSRレベル」から「法的コンプライアンス」に格上げされる。財務上のペナルティと社会的信用リスクが直結するため、2026年以降は「削減できなかった場合のコスト」を財務計画に織り込む必要がある。

他社が参考にすべき点

対象の約300〜400社に加え、将来的な閾値引き下げも議論されており、中堅企業も早期準備が合理的。排出枠が余れば市場で売却して収益化できるため、積極的な削減投資が財務メリットを生む構造。J-クレジットは上限付きの補助手段として活用可能だが「直接削減」が本筋であり、クレジット頼みの対応は長期コストが高くなる可能性がある。