やったこと

Sciece Based Targets initiative(SBTi)が公開したテスコ(Tesco)の事例を基に、世界最大級の食品小売業者がScience Based Targetsを設定し、実際に再生可能エネルギー100%切替・Scope3農業排出削減を実現したプロセスを整理した。

具体的な手順・工夫

目標設定の3つの問い

テスコがSBTを設定するにあたり、まず以下の3点を問いに変換した:

  1. テスコにとって信頼できる気候変動目標とは何か
  2. それを現実的に達成するにはどうすればよいか
  3. 実施コストはいくらか

戦略の核心:電力コストの60%問題

  • 運営上のカーボンフットプリントの60%が電力消費から来ることを特定
  • 1.5℃・2℃シナリオの軌跡をプロットし、長期の「ゼロカーボン2050」目標が1.5℃と整合することを確認
  • 中短期の急峻な削減目標が必要と判明 → 再エネ電力への切替ロードマップを策定

Scope3農業排出の分離処理

  • サプライチェーン全体の製品フットプリント調査を実施
  • 農業排出がScope3全体の**約70%**を占めると判明
  • 農業排出と食品製造排出を「異質な課題」として別目標に分離して設定(異なる削減軌跡・サプライヤー関与方法が必要なため)

実績(2006年基準)

領域実績
設備・冷媒効率改善投資約£700百万(2006〜)
店舗・物流センター排出量床面積当たり41%削減
英国・アイルランド電力**再エネ100%**切替完了
アジア2016年にオンサイト発電に£800万投資
2030年再エネ計画オンサイト発電+PPA中心(証書依存50%未満)でコスト中立化

内部合意のハードル

  • SBTの概念を社内に普及させる教育活動が必要だった(サステナビリティチーム外では未知の概念)
  • プロパティ・調達など複数部門をまたぐ目標のため、横断的な調整が必須
  • 経営承認を得るには「コスト付きの達成シナリオ」をエネルギー・プロパティ・財務部門で共同作成することが決め手

得られた結果

  • 2030年までの再エネ100%切替をコスト中立で実現できる計画を策定・経営承認
  • SBTがサプライヤーとの協業の「共通語」となり、サプライチェーンエンゲージメントが加速
  • 投資家・ステークホルダーへのレピュテーション向上

他社が参考にすべき点

  • 食品・小売業: 農業由来Scope3はScope1+2の何倍もの規模。削減手法が異なるため、目標分離→専用サプライヤープログラムが現実的
  • 電力比率が高い製造業・小売業: 電力消費比率を最初に定量化し、再エネ切替ロードマップを「コスト試算付き」で作成することで経営承認を得やすくなる
  • SBT設定を検討中の企業: SBTは対外的な宣言だけでなく、内部で「科学に基づく野心的な中間目標」を設定する規律として機能する