やったこと
SBTiが公開したTDC NET事例を基に、デンマークの通信インフラ会社が「世界で初めてSBTi認定の2030年ネットゼロ目標」を取得するまでの具体的な戦略—エネルギー効率化、再エネPPA、Scope3サプライヤーエンゲージメント—を実務向けに整理した。
具体的な手順・工夫
なぜ2030年ネットゼロが現実的か
- TDC NETはデンマーク国内のデジタルインフラ(通信ネットワーク)を保有・運営
- デンマークの立法環境・ビジネス環境・政治的焦点が追い風
- 気候ロードマップは2030年ビジネスプラン(投資・支出計画)と完全に統合
Scope1+2削減の3本柱
| 柱 | 内容 |
|---|---|
| エネルギー効率化 | レガシー技術の廃止でネットワーク消費電力を継続削減。「最良のエネルギーは節約したエネルギー」が基本方針 |
| 再エネ調達(PPA) | 2021年にデンマーク国内4か所の太陽光発電所のPPAを締結。**約140GWh(全消費電力の60%相当・2023年)**をカバー。2028年に再エネ100%目標 |
| 追加性(additionality) | 再エネ証書のみではなく「新規に系統に追加する再エネ源から調達する」ことを必須要件に設定 |
Scope3対応:3,500サプライヤーへのアプローチ
TDC NETのScope3はバリューチェーン全体の約80%の排出量を占める。
- サプライヤー2分類: 高排出事業者と低排出事業者に分けて順次対応
- 高排出事業者への働きかけ: 自社目標への賛同+SBTiでの科学的目標設定を要請
- オンサイト監査(JAC): 世界20通信事業者が参加するJoint Audit Cooperation(JAC)を通じた現地監査
- 中小サプライヤー向け: 気候報告ワークショップ開催+EcoVadisへの登録推奨で第三者検証データを収集
- 新規サプライヤースクリーニング: カーボン排出が少ないサプライヤーを選ぶ持続可能性スクリーニングツールを自社開発
- LCAの導入: Scope3計算にライフサイクルアセスメントを導入し、より炭素集約度の低い材料選択を可能にする
残り20%のScope3削減策
- ハイブリッド勤務(週2〜3日在宅)で出張・通勤排出を削減
- Scope1+2の100%再エネ化でエネルギー関連間接排出を削減
- ダウンストリーム資産の再エネへの転換
得られた結果
- 世界初のSBTi認定2030年ネットゼロ目標を取得(SBTi Net-Zero Standard準拠)
- 2021年に4か所の太陽光発電PPAを締結し、消費電力の60%を新規再エネで賄う計画が確定
- サステナビリティ連動債(Sustainability Linked Bonds)を発行し、気候行動が資金調達コストにも好影響
他社が参考にすべき点
- 通信・データセンター業界: インフラ全体が電力で動くため、再エネPPA(追加性重視)が最速の排出削減手段。TDC NETの「地理的カバレッジに合わせて複数地点のPPAを締結」するアプローチは国内分散インフラ企業に有効
- 大企業のサプライヤーエンゲージメント担当: 3,500社超をいきなり対応するのではなく「高排出者→低排出者」の段階的アプローチが現実的。EcoVadis活用で中小サプライヤーの検証コストを下げられる
- SBT審査を受けたい企業: 「追加性(additionality)」を満たす再エネ調達(新規電源からのPPA)が審査での差別化要因になる。証書のみでは不十分