実装ステップ
1. SAF調達目標の設定と現状ギャップの把握
- DeltaのSAF目標:2030年までに燃料全体の10%をSAFに切り替え
- 現状:必要な技術進展がペースに追いつかず、目標達成にはインフラ整備の加速が必要
- まず自社の燃料消費量・空港別消費量・SAF調達可能量を把握し、ギャップを数値化する
2. SAFサプライヤーとの長期契約の締結
- Deltaは単年度調達から5年間の長期サプライヤー契約(Shell Aviation)に移行
- 長期契約のメリット:SAF生産への需要確実性を与え、供給量の拡大投資を促進する
- 優先拠点(高トラフィック空港)を絞ってSAF調達を集中させ、ブレンド率を最大化する
3. 拠点別SAF供給インフラの整備
Delta-Shell契約の対象5空港(SAF供給インフラ整備のモデル):
- ロサンゼルス(LAX)・ポートランド(PDX)・ニューヨーク(JFK)・ボストン(BOS)・ミネアポリス(MSP)
- ブレンドSAF(既存ジェット燃料にSAFを混合)とニートSAF(純粋SAF)の両方の配送体制を整備
- 燃料ロジスティクス・ブレンディング施設・流通能力を段階的に構築する
4. SAFの種類と調達優先順位の設計
SAFの技術別優先順位(コスト・可用性・持続可能性のバランス):
- HEFA-SPK(水素処理エステル・脂肪酸):現在最も商業的に入手可能。廃食油・動植物油由来
- アルコール・ツー・ジェット(AtJ):農業廃棄物・廃材由来の第2世代SAF
- パワー・ツー・リキッド(PtL):グリーン水素+回収CO2で製造する次世代SAF(2030年以降普及見込み)
- DeltaとShellは次世代SAF技術の評価・推進にも協力する設計
5. SAFのGHG削減効果の算定と報告
- 従来型ジェット燃料との比較で70〜80%のライフサイクルGHG削減が一般的
- CORSIA(国際民間航空機関ICAOの相殺メカニズム)とSAF規則の要件に準拠した算定方法を採用する
- Scope1(燃焼)・Scope3(燃料ライフサイクル)の両方での効果を算定・報告する
使うツール・標準
- CORSIA(国際民間航空炭素相殺削減スキーム):SAF適格性と排出削減認定の国際規則
- ASTM D7566:SAFの混合・適格性に関する国際技術規格
- RSB(持続可能な航空燃料のための丸テーブル)認証:持続可能性認証の主要基準
- ISCC CORSIA認証:CORSIAで認定されたSAF持続可能性認証スキーム
成功のポイント
長期サプライヤー契約が最も重要な実装要素である。SAF生産者にとって「需要の確実性」が設備投資判断の鍵であり、5年間の長期契約は生産能力増強への投資シグナルとなる。また、拠点を絞ったインフラ整備(全空港一律ではなくハブ空港優先)が初期投資の効率を高める。Deltaのように2030年目標を公表しながら、技術の進展状況に合わせてロードマップを柔軟に調整する「目標を持ちながら段階的に実装する」アプローチが現実的である。
日本企業への適用
日本の航空会社(ANA・JAL)も2030年までのSAF10%利用目標を設定しており、同様の長期サプライヤー契約戦略が有効である。日本では廃食油由来HEFA-SPKの国内生産能力拡大と農業廃棄物由来AtJ-SAFの実証が進んでいる。製油企業・商社がSAFサプライヤーとして参入を検討する場合、本事例のように大手航空会社との長期需要確約契約を先行確保することが事業化の前提条件となる。CORSIA適合SAFの認証取得(RSB・ISCC等)は日本語対応のコンサルタントも増加しており、初期コストが課題の場合は複数企業での認証費用のコンソーシアム分担が有効である。