やったこと

2026年7月17日、改正電気事業法が参議院本会議で可決・成立した。ロシアによるウクライナ侵略以降のエネルギー安全保障強化と、DX・GXによる電力需要増加への対応を目的に、送電網整備・電源投資ルール・太陽光設備の安全対策の3つを柱とした改正だ。公布から9ヶ月以内(2027年上半期目途)の施行が見込まれる。

具体的な変更内容

1. 送電網整備の財政投融資スキーム(新設)

  • 経済産業大臣が大規模送電線の整備計画を認定する仕組みを新設
  • 電力広域機関が財政投融資などを活用して整備費用を事業者に貸し付ける制度を創設
  • 地域間送電線整備向け融資の原資を拡充
  • 卸電力取引所の値差収益を国庫に納付し、送電網整備補助に活用するスキームを導入

これにより、再エネ大量導入に必要な送電線増強を民間リスクだけに依存せず、低利資金で整備できる道が開かれる。

2. 電源投資ルールの強化

  • 大規模発電事業者が設備を休止・廃止する際、一般送配電事業者等との事前協議を義務化
  • 廃止計画の事前調整により、供給信頼性の突然の低下を防ぐ仕組みを整備
  • 小売電気事業者の登録取消事由に「一定期間の事業休止」を追加し、ゾンビ小売業者を排除

3. 太陽光設備の安全対策の強化

  • 太陽光発電設備の支持物(架台)等を第三者機関による「工事前の技術基準適合性確認」の対象に指定
  • これは太陽光設備の自然災害時の崩落・飛散リスクへの対応
  • 事故原因の究明が困難な場合、製造業者・輸入販売事業者・工事業者に協力義務を課す

4. 電力市場制度の整備

  • 卸電力取引所の経済産業大臣による指定・監督制度を創設
  • 翌日市場に加え、中長期市場や需給調整市場を新設

得られた結果(制度の意義)

  • 再エネ事業者が直面していた「接続待ち・送電容量不足」問題に対し、財政投融資で国が下支えする構造が確立
  • 太陽光FIT・FIP事業者は架台の安全基準対応コストが生じるが、リスク管理の実績化として投資家評価向上が期待される
  • 電力小売市場の健全化(事業休止者の排除)により、切替先の信頼性が向上

他社が参考にすべき点

  • 太陽光発電事業者・EPC(設計・調達・建設)業者: 「工事前の技術基準適合性確認」の対象となる架台・支持物の設計基準と第三者確認機関の選定を今のうちに整理しておく必要がある。施行まで9ヶ月以内のため、既存案件のレビューも並行して実施を推奨。
  • 再エネ電源開発・PPAプレイヤー: 財政投融資を活用した送電線増強スキームを経産省の認定プロセスで使えるかどうかの確認が重要。特に離島・遠隔地の大規模再エネ開発では接続コスト分担が大幅に改善する可能性がある。
  • 電力小売事業者: 登録維持の要件として一定の事業継続性が問われるようになるため、停電リスク管理・調達ポートフォリオの見直しが求められる。
  • 設備メーカー・輸入業者: 事故時の原因究明協力義務が生じるため、品質記録の保存期間延長と追跡可能性(トレーサビリティ)の整備が必要。