実装のポイント

三菱マテリアルなど8社が共同で、チリの銅鉱山から国内の物流拠点に至るサプライチェーン全体で「低GHG銅ケーブル」の環境価値を伝達するマスバランスクレジットモデルを実装した。この手法のポイントは、採掘段階で確保したGHG削減効果を、製錬・加工・流通・施工の各工程を経ても失わずに最終製品へ引き渡せる点にある。

マスバランスクレジットモデルとは、「原料が有する特定の特性をクレジットとして発行し、発行したクレジットを製品または製品の一部に付与する方法」(ISO 22095:2020 および 2026年1月発行の ISO 22095-2に基づく定義)。物理的に低GHG原料を混在させずとも、クレジットという形で環境価値を帳簿上で移転できる仕組みである。

具体的な手順

Step 1 – 採掘段階での低GHG化
チリのエスコンディーダ銅鉱山(BHP)において、購入電力の100%を再生可能エネルギーに切り替え、GHG排出量を大幅に削減した状態で銅精鉱を採掘する。この削減実績をクレジットとして数値化する。

Step 2 – 製錬工程でのクレジット移転
三菱マテリアルが銅精鉱を製錬・加工して銅荒引線を製造。この工程でマスバランスクレジットを引き継ぎ、銅荒引線の環境価値を記録する。

Step 3 – 流通・加工でのトレーサビリティ確保
三宝メタル販売を経てFCM・弥栄電線がケーブルに加工する際も、クレジットを伝達しながら製品化。NTTサーキュラスト・NTTデータが開発したトレーサビリティ管理アプリケーションが各工程の情報を記録・連携する。

Step 4 – 最終実装と環境価値の完結
泉州電業がアマゾンジャパンの物流拠点へ銅ケーブルを納入・施工。施設側は「低GHG銅ケーブルを採用した」という環境価値を調達実績として主張できる。

得られた結果

国際標準(ISO 22095)に準拠したマスバランスクレジットモデルをバリューチェーン全体に適用し、採掘段階のGHG削減効果を最終製品まで伝達する実証に成功した。トレーサビリティアプリにより、各社が保持する環境価値の情報を透明性高く管理・伝達できることを確認。今後は銅以外の素材や他業種への応用可能性が期待される。Scope3排出量のカテゴリ1(購入した製品・サービス)削減手段として、サプライヤーへのクレジット要求という新たなアプローチを示している。