やったこと
GXリーグの「GX経営促進ワーキング・グループ」が2024年5月に公表した「削減貢献量-事業会社による推奨開示仮想事例集」は、気候関連の機会として自社製品・サービスによる社会の排出削減貢献量(Avoided Emissions)を開示する際の実務手順を体系化。WBCSDガイダンスに整合した11カテゴリ(エネルギー脱炭素化・電化促進・輸送電化・製品省エネ・軽量化・製品寿命伸長・建物脱炭素化・家畜排出削減・廃棄物処理等)の仮想開示事例を収録。
具体的な手順・工夫
削減貢献量開示の前提4条件(省略不可)
- 科学的根拠に基づく削減目標の設定:SBTi認定が最も一般的。SBTiが対応していない業種はIEAシナリオ・NDC・経産省分野別技術ロードマップとの整合で代替可能
- Scope 3を含む目標設定:Scope 3がScope 1〜3合計の40%超の場合は目標設定が必要(SBTi基準)。困難な場合は理由を説明
- 目標達成に向けた進捗の定量開示:生産量変動など外部要因による一時的増加も原因説明と合わせて開示
- トランジション戦略の開示:移行計画の前提条件(原料価格・政策環境等)も並記する
算定の核心:ベースライン差分方式
- 削減貢献量 =「従来製品・サービスのGHG排出量(ベースライン)」ー「新製品・サービスのGHG排出量」
- GHGインベントリ(Scope 1〜3の自社排出量)と明確に区別して開示すること(混同禁止)
- 対象製品・サービスの環境以外への悪影響(リバウンド効果・生物多様性毀損・人権)も評価・開示が推奨
寄与率(Contribution Rate)の設定
- バリューチェーン上の複数ステークホルダーが関与する場合、自社への配分比率を明示
- 例:住宅脱炭素化材料メーカーが製造50%・原材料/その他50%と仮設定し、算定値に0.5を乗じて開示
- 業界横断で寄与率の標準化議論は進行中。現時点では保守的に算定し、算定根拠を透明に開示することが重要
11カテゴリ別の開示事例(仮想)
| カテゴリ | 典型的な製品・サービス |
|---|---|
| 電気・熱等エネルギーの脱炭素化 | PPAプロバイダー、再エネ電力供給 |
| 電化の促進 | 産業用ヒートポンプ、電気ボイラー |
| 輸送の電化 | EV・燃料電池車 |
| 製品使用時の排出抑制 | インバーター制御機器 |
| 軽量化に伴う省エネ化 | 軽量化素材 |
| 製品使用時の省エネ化 | 高効率インバーターエアコン |
| 低・脱炭素原料を活用した製品 | バイオマス素材製品 |
| 製品寿命の伸長 | 長寿命化部品・メンテナンスサービス |
| 建物の脱炭素化に資する製品 | 断熱材・高断熱窓 |
| 家畜由来の排出削減 | 飼料添加剤・管理システム |
| 廃棄物処理における排出抑制 | 廃棄物削減・リサイクルソリューション |
得られた結果
削減貢献量開示は「GHGインベントリの削減」では見えなかった企業の社会的価値を定量化できる。一方でグリーンウォッシング批判への対応として保守的算定・透明な根拠開示が不可欠。SBTi認定取得企業が実例で多数確認されており、認定を以て開示の信頼性を担保するアプローチが主流化。
他社が参考にすべき点
削減貢献量開示を検討する製造業・素材メーカーが最初に着手すべきは「自社製品がどのカテゴリに該当するかの特定」と「ベースライン製品との排出量差分の粗計算」。GHGインベントリの削減が限界に近い業種(素材・エネルギー機器・輸送機械)ほど削減貢献量開示の競争優位が高い。まず事例集11カテゴリから自社に近いものを選び、仮想事例をひな形として社内試算を開始するのが実務上の最速アプローチ。