やったこと

CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)がCDP Supply Chainメンバー500社以上の実践から導出した「Scope3排出量削減の4ステップ」(2022年公表)。フォードモーター・シスコ(Cisco)など先進企業の実装事例をもとに、サプライヤーへの開示要請から科学的根拠に基づく目標(SBT)の連鎖設定まで、購買企業がバリューチェーン全体のScope3削減を主導するための実務フレームワーク。

具体的な手順・工夫

Step 1: 購買力を活用した開示の透明性確保

  • 上流Scope3排出量は自社直接排出量の平均11.4倍という実態を認識することが出発点
  • 戦略的サプライヤーへのGHG排出量・環境リスク・ガバナンス情報の開示を要請
  • フォードモーターの事例:戦略的サプライヤーへ環境データ開示を義務化し、透明なサプライチェーンを構築
  • 規模感:2021年実績として200以上の購買企業が55兆ドルの購買力を背景に、CDP Supply Chain経由で24,000社以上のサプライヤーに開示要請

Step 2: 明確な期待値設定とサプライヤーの行動変容

  • データ収集だけでなく、削減目標設定・削減行動の実施まで求める段階へ移行
  • 2020年実績:CDPサプライチェーンメンバーのサプライヤーが合計619百万tCO2削減(石炭火力159基分の年間発電停止に相当)
  • シスコ(Cisco)の実装例:
    • Tier 1・Tier 2の全サプライヤーにCDP経由での開示を義務化
    • 自社のネットゼロ目標に整合したKPIをサプライヤー管理プロセスに埋め込む
    • Scope 1・2排出量の第三者検証をサプライヤーに要求し、データ品質を担保

Step 3: 科学的根拠に基づく目標(SBT)のバリューチェーン連鎖

  • 自社SBT認定を超え、主要サプライヤーへのSBT設定を要件化する段階
  • 1.5℃目標(SBTi基準)との整合を各社のロードマップに組み込ませる
  • SBT連鎖により、削減コミットメントが購買企業からサプライヤーへ体系的に波及する

Step 4: 能力構築でサプライヤーの成功を支援

  • 目標設定・算定・報告に関するツール・トレーニング・専門家支援を提供
  • 業界横断での協働(セクターイニシアチブ)でサプライチェーン全体の基準を引き上げ
  • CDP Supply Chainプラットフォームを活用した一括開示要請・進捗管理の効率化

コスト削減の工夫

  • CDP一元管理プラットフォームで数千社への開示要請を効率化(個別メール不要)
  • 「全サプライヤーに要請しない」原則:購買金額上位20%に集中し、Scope3 Cat.1排出量の70〜80%をカバー
  • Tier 1のみ直接データ収集、Tier 2以降はCDPに集約されたデータを二次活用

得られた結果

2020年単年でCDP Supply Chainメンバーのサプライヤーが619百万tCO2削減を達成。単なる開示要請を超え、SBT連鎖・KPI組み込みを実践した先進企業(シスコ等)では、Scope3削減をサプライヤー評価の正式指標とすることでバリューチェーン全体の排出量管理が定量的に追跡可能になっている。

他社が参考にすべき点

製造業・大手小売・電機メーカーがScope3 Cat.1(購入製品)削減に着手する際の実務手順:①CDP Supply Chainに参加し、上位20サプライヤーへの開示要請を一括送付→②開示データからホットスポットサプライヤーを特定→③削減目標(SBT設定推奨)をサプライヤー評価基準に明示し、KPIとして契約・評価プロセスに組み込む→④技術支援(算定ツール・トレーニング)を提供して削減行動を促進。購買力を持つ企業は「要請する」だけでなく「成功を支援する」姿勢がサプライヤーの自発的行動を引き出すカギとなる。