実装のポイント
サプライチェーン全体でのGHG削減を「見える化」する手法として、マスバランスクレジットモデルが注目されている。物理的に混合されるバルク素材(銅や鉄など)では、環境配慮型原料と通常原料を製品ごとに分離することは現実的でない。マスバランス方式は、採掘段階での低GHG実績を「クレジット」として発行し、バリューチェーン全体で転写・帰属させる手法であり、ISO 22095:2020で標準化されている。
三菱マテリアル・NTTサーキュラスト・アマゾンジャパンなど8者が連携した今回の実証では、チリのエスコンディーダ銅鉱山(BHP運営)が購入電力の100%を再生可能エネルギー化することでGHG排出量を大幅に削減した「低GHG銅精鉱」を出発点とし、製錬・ケーブル加工・販売を経てアマゾンジャパンの物流拠点の電気配線として実装した。
具体的な手順
ステップ1: 低GHG原料の認定 BHPがチリのエスコンディーダ銅鉱山において、採掘・選鉱工程の購入電力を100%再エネ化。この削減実績をGHGクレジットとして定量化する。
ステップ2: バリューチェーン全体での転写 三菱マテリアルが銅荒引線まで加工する段階でクレジットを引き継ぎ、FCM・弥栄電線がケーブルに加工する過程でも追跡を継続する。三宝メタル販売・泉州電業を経てアマゾンジャパンに販売される。
ステップ3: デジタルトレーサビリティの確保 NTTサーキュラストとNTTデータが開発したアプリケーションで、各工程での環境価値の移転を記録・追跡。ISO 22095:2020準拠の手続きで透明性を確保する。
ステップ4: 最終実装と検証 アマゾンジャパンの物流拠点の電気配線として実装し、銅ケーブルに付与された低GHG属性を実証。Scope3カテゴリ1(購入した製品・サービス)の排出量削減に計上可能な形で記録する。
得られた結果
今回の実証により、物理的に分離不可能なバルク素材であっても、マスバランスクレジットモデルを用いることでサプライチェーン上流の環境改善効果を購入者(アマゾン)のScope3削減として帰属させることが技術的に可能であることが示された。従来は困難だった「銅調達のGHG削減」を実現する新たな実務経路として、製造業・建設業・流通業が自社Scope3削減施策として応用できるモデルとなる。