やったこと
三重県亀山市に立地するF-TECH亀山工場(自動車サスペンション部品製造・従業員約6,000名)が、2011年東日本大震災後の電力危機を契機に、日本の自動車部品専業メーカーとして初めてISO50001(エネルギーマネジメントシステム)を2013年10月に第三者認証取得した事例。Clean Energy Ministerial(CEM)/IPEECが公表したGlobal GEMSIE事例集より。
具体的な手順・工夫
段階1:エネルギー計測基盤の構築(2009年設置)
- 2009年の工場拡張時に、電力・天然ガス・圧縮空気・溶接シールドガスの約400点を同時モニタリングできるエネルギー計測システムを導入(ISO50001導入前から計測基盤あり)
- このシステムが後のISO50001の根幹になる豊富なデータ収集を可能にした
段階2:EnMSチームと作業部会の編成
- 施設部門だけでなく、スタンピング・溶接・塗装・組立の全製造部門を含めたエネルギー管理チームを結成
- 「守りから攻めへ」をテーマに部門横断の専門家作業部会(WG)を組成し、システム構築段階からフレームワークを整備
- ISO14001と統合管理し、10名の環境担当チームを組成(既存の ISO14001認証(1998年〜)を活用)
段階3:エネルギーレビュー(7ステップ)
- エネルギー使用量の多い設備をリストアップする「設備管理台帳」を作成し、定格容量×年間稼働時間から理論年間エネルギー使用量を算出
- 各改善機会を「年間エネルギーコスト削減見込み」「改善に要する時間」「投資回収期間」「環境・安全・品質への影響」の4基準でスコアリングし、優先順位付け
- エネルギーベースラインを工場拡張完了後の2011年度に設定
主な省エネ施策(2012〜2014年)
- 塗装循環ポンプへのインバータ制御導入
- スタンピングエリアへのLED照明導入
- 部門ごとの生産単位あたりエネルギー使用量を可視化し、社内イントラで全員が閲覧可能に
- 改善提案制度を活用:提案提出率は2012年99% → 2014年148%に上昇
年別の実績推移
| 年度 | CO2削減量 | コスト削減 | 投資額 | 回収期間 |
|---|---|---|---|---|
| 2012 | 81 t-CO2 | 280万円 | 690万円 | 2.5年 |
| 2013 | 154 t-CO2 | 710万円 | 920万円 | 1.3年 |
| 2014 | 182 t-CO2 | 880万円 | 270万円 | 0.3年 |
ISO50001構築・認証コスト(2011年)
- 合計:1,328,000円(人件費52.8万円 + 外部コンサルティング80万円 + 第三者審査60万円)
- ※エネルギー計測システム自体はISO50001導入以前の投資のため含まない
グローバル展開
- 2015年3月:「Global Ftech EMS」を策定し、亀山工場の知見を標準化
- 2016年:米国オハイオ州工場・中国2工場にISO50001を展開
得られた結果
- CO2排出量を2010年度比27%削減(1,379 t-CO2ベースから)、2014年単年で182 t-CO2削減
- 年間省エネコスト削減額880万円(2014年)。ISO50001構築費用(132.8万円)の回収期間はわずか1.8ヶ月
- 3年間累計の省エネコスト削減額:1,870万円
- 日本の自動車部品専業メーカーとして初のISO50001認証(2013年10月)
他社が参考にすべき点
ISO50001を製造拠点に導入する最速アプローチ:①400点規模の多点エネルギー計測を整備してデータ基盤を作る(無ければ設備管理台帳で代替可)→②施設部門だけでなく製造部門を最初からチームに含める(設備仕様の決定権は製造部門にあるため)→③改善機会を4基準でスコアリングして優先度を可視化し、費用対効果の高い施策から実施→④既存ISO14001の管理体制と統合して運用コストを抑える。投資回収期間が0.3〜1.8ヶ月という実績は「補助金なし」でも成立することを示しており、CO2削減と製造コスト削減の同時達成が可能。