やったこと
Watt & Ton LLCのHolly Lahd氏が、Fortune500企業での脱炭素戦略の実装経験をもとに、再エネPPA(電力購入契約)とScope3サプライヤーエンゲージメントの2大戦略を実務視点で比較分析。2025年9月にFrontiers in Sustainable Energy Policy誌に査読付き論文として掲載。GHGプロトコルの改訂プロセスが進む中、実装の現実を標準策定に反映させるべきと主張。
具体的な手順・工夫
再エネPPAが社内承認を取りやすい3つの理由
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GHG会計基準との整合性が明確: Scope2ガイダンスに明示的に認定されており、削減量の算定が曖昧になりにくい。「何kWhの再エネを調達した→Scope2がこれだけ下がる」という直線的な説明が可能。
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コア事業への影響が最小限: 電力購入という既存の調達プロセスに近く、製造・販売・R&D部門への調整コストが低い。社内稟議で「オペレーション負担」を問われても答えやすい。
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取引コストが予測可能: 10〜15年の長期契約(差金決済型)で、管理コストが初期設定後は安定する。
Scope3サプライヤーエンゲージメントが苦戦する3つの構造的問題
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データの不整合: サプライヤーが提供するGHG排出データが、自社の帰属計算方法(attributional accounting)と合わない。CDP経由でも同様。
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取引コストが削減量を上回る: 数万社のサプライヤーからデータを集める行政コストが、実際に実現される排出削減より大きくなりうる。CDP Supply Chainは2024年に6万社以上にデータ要求を送付。
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Scope3インベントリへの反映が困難: SBTiが推奨しても、現行基準ではサプライヤー改善が自社Scope3インベントリの数字として現れにくく、社内説明が難しい。
GHGプロトコル改訂への提言
- 実装の現実(内部承認プロセス・事業影響・取引コスト)をWeighted考慮に入れた基準設計が必要
- PPA向けには現行Scope2ガイダンスの検証・整備
- Scope3向けには「エンゲージメントの市場ベース介入標準」の新設が検討されている(GHPプロトコル2024年改訂計画)
得られた結果
- グローバルで200GW超の再エネPPAが締結済み(2015年時点は15GW以下)
- 11,000社超がGHG削減目標にコミット
- Scope3の実質削減は「現行基準では困難」が業界コンセンサス
- GHPプロトコルは2024年にCorporate Standard・Scope2ガイダンス・Scope3標準の改訂プロセスを開始
他社が参考にすべき点
脱炭素戦略の社内稟議で躓く担当者への実践的示唆:①PPAを優先するのは「楽だから」ではなく「会計基準と整合しており削減量を証明しやすいから」と説明する→②Scope3サプライヤー対応は数字を出せる範囲(CDP Score改善・大手サプライヤー数社への集中支援)から始め、全サプライヤーへの一括データ要求は避ける→③GHPプロトコル改訂の行方(市場ベース介入標準の新設)を2025〜2026年にウォッチし、基準変更に対応した戦略の見直しを計画する。
