実装ステップ
- 排出源の特性分析 — アンモニア・尿素製造プロセスは高濃度CO2(プロセスガス)と低濃度CO2(燃焼排ガス)の両方を排出する。捕集に適しているのは高濃度流であり、まず自社プロセスの排出ストリーム別CO2濃度を分析する。
- 捕集技術の選定 — SABIC ANはShell Global Solutionsの技術を採用。アンモニア合成・尿素製造のプロセス統合型CCSを設計し、捕集CO2を生産プロセス内で直接活用することでコスト最適化を図った。
- テクノロジーパートナーの確保 — 本施設はKBR(アンモニア)・Stamicarbon+thyssenkrupp Uhde(尿素2系列)・Shell Global Solutions(CCS)と複数の専門企業が技術ライセンスを分担。大規模産業施設では技術ライセンス・EPC・運転ノウハウが分断されることが多く、統合設計管理者(Samsung E&A)の役割が重要。
- スケジュールと規制要件を設定する — 最終投資決定(FID)取得後、2030年第3四半期に試運転開始・第4四半期に商業運転開始を目標とする長期スケジュール。各国のCCS規制・CO2貯留・輸送インフラの整備状況を先行確認することが必要。
使うツール・標準
- Shell CANSOLV / ADIP-X等(炭素回収溶媒技術・本事例はShell CCS技術)
- KBR Kaap技術(アンモニア製造)
- Stamicarbon / thyssenkrupp Uhde Urea技術(尿素製造)
- 設備統合設計:複数のプロセスストリームを接続するCCSユニットの詳細設計
施設規模データ
| 設備 | 容量 |
|---|---|
| アンモニアプラント | 年産120万トン |
| 尿素プラント(2系列) | 年産合計260万トン |
| 新総尿素生産能力 | 年産740万トン(従来比54%増) |
| 稼働開始予定 | 2030年Q3(試運転)〜Q4(商業運転) |
成功のポイント
- プロセス統合型の設計:CCSを後付けでなくプロセス設計の初期段階から組み込むことでエネルギーペナルティを最小化し、捕集CO2の有効利用(尿素製造の原料として循環利用)が可能になる。
- サウジビジョン2030・食料安全保障との整合:大規模な肥料(尿素)増産とCCSを組み合わせることで、国家開発戦略・サステナビリティ目標の両面に訴求できるプロジェクトとして成立させた。
- 長期FID後の実装確実性:FIDが確定した段階でEPC・技術ライセンスを明確にし、2030年商業運転に向けた詳細設計を確実に進める体制を整備。
日本企業への適用
- 化学・素材・肥料事業者にとって、プロセス統合型CCSはScope 1削減の最短経路の一つ。自社プロセスの高濃度CO2排出ストリームを特定し、CCS技術ライセンサー(Shell・Mitsubishi等)との初期技術評価を開始することを推奨する。
- 日本政府のCCS事業化スキーム・貯留候補地(北海道苫小牧・東新潟等)との接続可能性を同時に評価することで、2030年代の商業運転目標を設定できる。
