概要

国際民間航空機関(ICAO)のCORSIA(国際航空カーボンオフセット・削減スキーム)は、2027年以降の国際航空排出量の一定割合をEligible Emissions Units(EEU)でオフセットすることを求める。日本航空(JAL)とClimeworks Solutionsが締結した契約は、CORSIAに準拠した初のCDR(炭素除去)購入協定として業界の注目を集めている。バイオチャー・土壌炭素固定・直接空気回収(DAC)の複合ポートフォリオが採用された。

実装ステップ

  1. 排出量インベントリの確定:まずCORSIA対象の国際路線ごとのCO2排出量を航空燃料消費量から算定する(ICAO CORSIAガイドラインに準拠)。削減できない「残余排出量」の規模を特定する。
  2. 削減ヒエラルキーの設定:機材更新・運航最適化・SAF(持続可能な航空燃料)の順に削減を優先し、どうしても削減できない残余排出量のみCDRでオフセットする方針を策定する。
  3. CDRポートフォリオの設計:単一技術依存のリスクを避けるため、近自然系(バイオチャー・土壌炭素)と工学系(DAC)を組み合わせる。CORSIAのEEU認定を受けたプロバイダーのみ選定する。
  4. CORSIA EEU認定の確認:調達先がICAO承認の認定基準(VCS・Gold Standard・VERRA等)を満たしているか、またはCORSIA Phase 3以降の新たなCDR認定パスウェイを取得済みかを確認する。
  5. 長期契約の締結:DAC等の工学系CDRは初期コストが高く、供給不安定リスクがある。複数年の購入コミットメントによってプロバイダーへのオフテイク確実性を提供し、コスト低減に貢献する。
  6. 報告・開示:CORSIAの年次排出量・オフセット報告(CORSIA Annual Report)に購入したEEUの量・種類・認定基準を記載する。

使うツール・標準

  • ICAO CORSIA 実施マニュアル(2019年版・随時更新)
  • Climeworks・Carbon Direct等のCDRポートフォリオ提供者
  • VCS/CDM/Puro.earthのCORSIA認定クレジット

成功のポイント

  • SAF単独では2050年ネットゼロに届かない。CDRは長期戦略の必須要素として早期に体制整備を始める
  • 技術的な耐久性(permanence)の高いDACクレジットを「保険」として一定比率持つことで、将来の規制強化リスクをヘッジできる

日本企業への適用

JALの事例は日本の航空会社だけでなく、サプライチェーンのScope 3(カテゴリ6:出張)を削減したい一般企業にも参考になる。CORSIAの文脈で日本のJ-クレジットがEEU認定を受けるには、CORSIA適格性審査の要件充足が必要なため、国内クレジット管理部門は早期に情報収集を開始することが望ましい。