研究の概要
洋上風力タービンの保全計画において、「機器の劣化状態」と「現場へのアクセス可否(天候・海況)」を同時に考慮した動的閾値型の予知保全モデルを提案した研究。従来の状態基準保全(CBM)では劣化が一定水準を超えたら即座に修理指示を出すが、洋上では悪天候で作業船が出せない期間が多く、固定閾値のアプローチは現実と合わない。
本研究はこの問題をマルコフ決定過程(MDP)として定式化し、アクセス可能・不可能の2状態それぞれで異なる介入閾値を設定することが最適方策であることを理論的に証明した。さらにデンマーク北海を想定したケーススタディで実際のコスト削減効果を検証した。
主な発見・成果
- 最適保全方策は閾値型を維持するが、閾値はアクセス状態に応じて変化する。アクセス不可時は正常な状態でも早めに修理を予約するなど、先読み的な行動が最適となる
- 費用削減効果: 通常の固定閾値CBMと比較して4.31%のコスト削減、年齢基準保全(Age-Based Maintenance)と比較では33.95%の大幅削減を達成
- 洋上タービン特有の「断続的アクセス」制約をモデル化することで、予防的・機会的保全の合理的タイミングを定量化できる
- 理論的証明として、「最適閾値は劣化特性とアクセス特性の両方に依存し、一方を無視すると費用増加につながる」ことを示した
実務への応用
- 洋上風力O&M(運用・保守)コスト低減の具体的手法として、保全計画システムへのアクセス予測データ統合が有効であることが実証された
- 年齢基準保全(固定周期の予防保全)から状態基準保全へ移行する際の費用効果(~34%)は、O&Mコスト削減投資判断の根拠として使える
- 天候予報データ(波高・風速予測)を保全意思決定システムに組み込む実装ロードマップの設計に応用可能
- 着床式・浮体式問わず、海上アクセス制約のある全ての再エネ施設(洋上変電所、浮体式太陽光等)に拡張できる考え方
