研究の概要
ブルーカーボンとは、海草・藻類・マングローブ等の海洋生態系が吸収・貯留する炭素のことで、森林による「グリーンカーボン」と並ぶ自然系炭素除去手段として国際的に注目されています。日本では気候変動により沿岸域の「磯焼け」(海藻が著しく減少する現象)が深刻化しており、沿岸生態系の劣化がブルーカーボン吸収ポテンシャルを低下させるという悪循環が生じています。
NEDOとKAISO BANKは、グリーンイノベーション基金事業の一環として、全国5つの漁港周辺海域で「核藻場(核となる藻場)」の造成実証を実施。種苗生産(つくる)→中間育成(育てる)→基盤ブロック設置・移植(増やす)→広域モニタリング(測る)という一気通貫の藻場造成技術サイクルを確立し、多様な海洋環境での再現性を検証しました。
主な発見・成果
- 5つの異なる海洋環境で核藻場の造成に成功:水温・潮流・底質の異なる全国5漁港での実証により、技術の汎用性を確認
- 約1年で核藻場に成長:2024〜2025年度の実証期間中に、移植した海藻が核藻場と呼べる規模まで成長
- 一気通貫ビジネスモデルの有効性を実証:種苗生産から広域モニタリングまで一貫して提供するサービスモデルが機能することを確認
- 2030年度目標:70ha造成・年399tCO₂以上吸収:今後の技術高度化・大規模化を通じて、具体的な炭素吸収目標を設定
実務への応用
水産・漁業関係者、沿岸自治体、カーボンクレジット投資家、Scope 3削減に取り組む企業にとって重要な情報です:
- ブルーカーボン・クレジットの国内調達:日本国内での藻場造成クレジットは今後Jクレジット等として流通する可能性が高く、水産系Scope 3相殺や地域貢献型CSR施策として活用できる
- 漁港・漁協との連携機会:藻場造成は漁場環境の回復(磯焼け対策)と炭素吸収の両立が可能で、水産業との共創型GXプロジェクトとして設計できる
- 自然資本・生物多様性との連動:TNFD(自然関連財務情報開示)対応の観点からも、沿岸生態系の回復・維持への投資として報告可能
