研究の概要
欧州の連続型日中電力市場(Continuous Intraday Market)において、蓄電池(BESS)を活用した新しい取引戦略を提案する。従来のローリング型イントリンシック最適化とは異なり、価格分位点予測モデルを用いて先行ポジションを開き、デリバリー直前に蓄電池で価格乖離をヘッジする「予測駆動型ラウンドトリップ取引」手法である。
ドイツのEPEX SPOT市場2024年データを用いてバックテストを実施。4種類の価格予測モデル(複雑度が異なる)を比較し、蓄電池は純粋なアービトラージではなく「ポジションクローズのバックストップ」として機能させることで、サイクル消費を大幅に抑制した。
主な発見・成果
- 収益EUR 2.06M対比較基準EUR 1.77M(+16.4%):ローリング型最適化より高い収益を達成
- サイクル消費を55%削減:167回 vs 365回(等価フルサイクル)
- 収益性は価格予測精度に依存しない:個別ポジションが非収益でも全体として収益プラス
- 価格分位点予測が複雑になるほど収益は向上するが、シンプルなモデルでも基準を上回る
実務への応用
蓄電池の日中市場活用において「とにかく毎日フル稼働させる」戦略はサイクル寿命を消費し長期収益を損なう。本研究は「予測で先行・蓄電池でヘッジ」という役割分担により、蓄電池のサイクル消耗を半減させながら収益を向上させる設計を示す。日本でもスポット市場や需給調整市場での蓄電池運用戦略の設計において、BESSを「保険」と位置づけるアーキテクチャは参考になる。
