研究の概要

再生可能エネルギーやデータセンターの急増に伴い、送電網の混雑緩和が急務となっている。本研究は、物理的な送電線を新設する代わりに、ペアで運用する蓄電池(Battery Energy Storage System: BESS)を「仮想送電線(Virtual Transmission Lines: VTL)」として活用する長期発電・送電拡張計画モデルを提案する。

VTLは2台の蓄電池が同時に充電・放電しない制約を持つペア配置で実現する。混雑した系統の両端に設置することで、実質的に潮流を制御し、物理線増設なしに混雑を緩和する。最適化モデルはVTL導入コストと送電混雑コストのトレードオフをIEEE 24ノードシステムで検証した。

主な発見・成果

  • 混雑を12.3%削減:加重平均ベースで送電混雑コストを12.3%低減
  • 個別混雑輸送路では最大67%削減:特定の混雑ラインでは大幅な改善が確認された
  • 計画コストの増加は0.3%のみ:物理線新設と比較して極めて低コストでの混雑緩和が可能
  • 系統事故(N-1故障)シナリオ下でも送電違反件数の減少を確認

実務への応用

送電線の新規建設は用地取得・許認可・建設期間のいずれも長期化する課題がある。VTL戦略は系統運用者が「蓄電池導入コスト」と「送電混雑解消便益」を定量的に比較評価できる枠組みを提供する。特に再エネ大量導入後の混雑ラインや、物理送電線増設が困難な都市部・沿岸部の系統計画において有効な代替策となる。日本の系統計画・容量市場への参照事例としての活用が期待される。