実装のポイント
日本製薬工業協会(製薬協)は2026年3月に「Scope3算定とビジネスパートナーとの連携実践ガイドライン」を策定・公開した。製薬業界では自社(Scope 1・2)の排出は全体の約10%に過ぎず、**バリューチェーン全体(Scope 3)が約90%**を占めるため、サプライヤー・物流・販売チャネルまで含めたエンゲージメントが不可欠だ。本ガイドラインは製薬業界固有の商流・バリューチェーン構造を踏まえた実務的な算定・削減の手引きであり、業界横断的なScope 3対応の標準化を目指している。
具体的な手順
エンゲージメント対象の整理 対象は「バリューチェーン上のすべてのビジネスパートナー」と規定:
- 原材料・包装材供給元(Upstream)
- 製造受託機関(CMO)
- 卸・倉庫業者
- 物流業者
- 販売店・薬局
- 廃棄業者(Downstream)
4段階の実装ステップ
- ステップ1 ─ 機運醸成:社内・サプライヤーへのGHG削減の必要性の説明と合意形成。経営層のコミットメントを取り付け、優先度の高いパートナーを特定する
- ステップ2 ─ 現状把握:GHG排出量の算定・開示を開始。当初は活動量×排出係数の「スペンドベース」または「平均データ」で算定し、段階的に精度を上げる
- ステップ3 ─ 目標設定:科学的根拠に基づく削減目標(SBTi等の第三者認証)を設定。自社目標とサプライヤーへの要請目標を整合させる
- ステップ4 ─ 削減実行:1次データ(実測値)への移行を推進しながら具体的な削減施策を実施・モニタリング
削減推進の3要素
- 測定:「バリューチェーン全体の当事者が1次データによる算出に早期移行することが必要」とガイドラインが明記
- 目標設定:SBTi等の科学的根拠に基づく第三者認証の取得
- 開示:透明性のある情報公開(TCFD・ISSB(IFRS S2)等への準拠)
得られた結果
製薬協の定量目標:2030年度までに2013年度比CO2排出量46%削減、2050年ネットゼロ実現。ガイドラインは製薬協ホームページで全文公開されており、業界内での標準的な算定・エンゲージメント方法の普及を図っている。Scope 3の90%超という構造は、食品・化学・素材等の製造業でも共通する課題であり、本ガイドラインの4ステップフレームワークは業種横断的に参照価値が高い。
