概要

本稿は、財務情報が監査や説明責任に耐える「証拠」として扱われてきた背景を、経理部の日常的な実務から描いています。請求書や納品書、契約書、稟議書などの証憑は、取引の実在性、計上時期、承認経路、見積りの根拠を裏付けるために整理・保存されます。年次監査では、数字そのものだけでなく、その数字がどのような事実と判断に基づくのかが確認されます。この構造は、気候変動や人的資本など、非財務情報の信頼性を考えるうえでも重要な視点になります。

ポイント

  • 財務情報への信頼は、帳簿上の数値だけでなく、請求書・契約書・稟議などの証憑によって支えられている。
  • 証拠には、取引の相手方、発生時期、金額、承認者、判断根拠などを第三者が追跡できることが求められる。
  • 監査で問われるのは、結果だけではなく、誰が、いつ、どの資料を使って判断したかという意思決定の履歴である。
  • 非財務情報も開示数値だけを作成するのではなく、データの出所、計算方法、責任者、承認記録を一体で整備する必要がある。
  • 脱炭素分野では、温室効果ガス排出量や削減効果について、活動量・排出係数・集計範囲・算定時点を説明できる証跡が信頼性を左右する。

実務への示唆

気候関連データを財務情報と同じように扱うには、開示直前の集計作業ではなく、日常業務の段階から証拠を残す仕組みを設計することが重要です。データの所有者、承認者、更新頻度、根拠資料、変更履歴を明確にし、監査や第三者保証で追跡できる状態をつくることが、非財務情報の信頼性向上につながります。

出典

「証拠なき非財務情報」(1)財務情報はなぜ証拠になったのか