概要

本章は、サイバーセキュリティが単なるIT部門の業務や任意の追加投資ではなく、事業継続のために避けられない「必須コスト」へ変化した背景を扱う。従来は、情報システムの障害や不正アクセスへの対策として、主にIT部門が担う領域と考えられていた。しかし、企業活動がネットワーク、クラウド、外部サービス、取引先とのデータ連携に依存するほど、セキュリティ上の問題は経営、サプライチェーン、顧客対応、社会的信用に直結する。脱炭素の観点でも、排出量データやScope3情報を継続的に収集・共有するには、データの真正性、可用性、アクセス管理を支える基盤が欠かせない。

ポイント

  • サイバーセキュリティは「IT部門だけの仕事」ではなく、経営・事業部門・調達・法務を含む全社的なリスク管理になった。
  • クラウドや外部委託、取引先との接続拡大により、自社だけを守る境界型の対策では不十分になっている。
  • セキュリティ対策の費用は、攻撃被害の復旧費だけでなく、操業停止、契約違反、信用低下、規制対応などの損失を防ぐための基盤投資と位置付けられる。
  • 脱炭素データを経営判断や開示に利用する場合、改ざん防止、証跡管理、権限管理、委託先管理がデータの信頼性を左右する。
  • サイバーリスクは一度の導入で解消するものではなく、監視、訓練、更新、インシデント対応を継続的に行う必要がある。

実務への示唆

脱炭素担当者は、Scope3やエネルギー使用量のデータフローを可視化し、どのシステム・委託先・取引先が情報にアクセスするかを整理する必要がある。経営層には、セキュリティ費用をIT予算ではなく、脱炭素情報の信頼性と事業継続を守るための共通基盤費として説明すると、部門横断の合意形成につながりやすい。

出典

第4章 セキュリティ(Cybersecurity)はなぜ「必須コスト」化したのか