概要
SBTiの新CEO・David Kennedy氏のもとで策定された2026-2030年戦略計画は、「一律アプローチ」から「セクター別カスタマイズ」へのシフトが最大の変化点。実務担当者が押さえるべき6つの変更点を整理する。
実装ステップ(6つの変更点への対応)
変更1:セクター別ガイダンスの加速的開発
2027年末までの完成目標。現在の開発状況は以下の通り:
| セクター | 状況 |
|---|---|
| 自動車・電力 | 策定完了 |
| 林業・農業 | 更新済み(400社フィードバック反映) |
| 海運・航空 | 新興フレームワーク開発中 |
| 建築・石油ガス・化学製造 | 新興フレームワーク開発中 |
対応アクション:自社セクターのガイダンス状況を四半期ごとに確認し、完成前に「暫定目標」でSBTi申請を行う。
変更2:環境クレジット(ブック・アンド・クレーム)の認定
新たにサプライチェーン内の低炭素技術投資から生じる排出削減量をScope3目標の達成クレジットとして認定する方針が導入される。
重要な制約:バリューチェーン「外」のカーボンクレジット(例:植林プロジェクト)は依然として削減目標のカウント対象外。カーボンクレジットは「補完手段」であって「代替手段」ではない。
対応アクション:サプライヤーへの低炭素技術支援(資金援助・技術移転等)を実施し、その削減量をブック・アンド・クレーム証書として申請できるかSBTiに問い合わせる。
変更3:柔軟な目標達成基準(ペナルティなし)
目標と実績の間にギャップがあっても、SBTiフレームワーク内に留まれる。外部環境の変化(例:EV市場の減速、政策変更)による一時的な未達は許容される。
対応アクション:目標設定時に「誠実な根拠」を文書化しておく。後から実績との乖離が生じた際に、外部要因を説明できる記録を残す。
変更4:同業比較ベンチマーキングツール(2026年末完成予定)
業界内で排出量実績を秘密保持のうえ比較できるデータベースを構築。パブリックデータセットの公開も検討中。
対応アクション:SBTiのベンチマーキングツールのβ版参加を申請し、自社の削減進捗を業界平均と比較してKPIを設定し直す。
変更5:バリデーション期間の短縮(47日→30日)
SBTi Servicesの効率化により、バリデーション(目標検証)の平均処理期間が47日から**30日(36%短縮)**に改善。サブスクリプション型料金モデルも検討中。
対応アクション:申請資料作成のリードタイムを見直し、認定取得スケジュールを前倒しできないか検討する。
変更6:アジア・アフリカへの展開
中国・インド・日本・東南アジアに新規オフィスを開設。現在アジアの参加率はヨーロッパの約60%にとどまる。
対応アクション:SBTi日本オフィス(開設予定)の連絡先を把握し、日本語での申請・サポート窓口を活用する準備を始める。
使うツール・標準
- SBTiセクターガイダンス:業種別算定方法論・削減経路
- ブック・アンド・クレーム証書:サプライチェーン内低炭素技術投資のクレジット
- SBTi Servicesバリデーション:目標検証(30日処理)
- 同業比較ベンチマーク:2026年末予定
成功のポイント
- セクターガイダンス完成前でも「暫定目標」でSBTi認定を取得し、完成後に正式目標へ移行する段階的アプローチが有効
- カーボンクレジットの活用範囲(バリューチェーン内のみ)を社内ステークホルダーに正確に伝え、誤解を防ぐ
- ベンチマーキングツールの活用で「業界内で自社がどの位置にいるか」を把握し、投資家・顧客への説明を強化する
日本企業への適用
日本はアジアの中でSBTi参加率が高い国の一つだが、中小企業・製造業のサプライチェーン全体への展開は課題。2027年末のセクターガイダンス完成はScope3目標設定の難易度を下げるため、今から準備を進めておくことで先行者優位を築ける。特に自動車・電力セクターはガイダンス策定済みのため、これらのバリューチェーンに属する企業は即座に対応可能。