研究の概要
電気自動車(BEV)の航続距離を左右する最大要因の一つが、暖房・冷却・バッテリー温度調整を担う熱管理システムである。スウェーデン・Chalmers工科大学のPrashant Lokur・Nikolce Murgovski両氏は、ヒートポンプ搭載BEVの熱管理を最適化するハイブリッド制御フレームワークを開発した。ルールベースの監視制御と非線形モデル予測制御(NMPC)を組み合わせ、乗員快適性・電池温度・コンポーネント制約を同時に満たしながらエネルギー消費を最小化する。モデルはCasADi(オープンソース)で実装し、GitHubで公開されている。
主な発見・成果
提案フレームワークは、寒冷地走行シナリオにおいて従来のルールベース制御と比較して熱エネルギー消費を20〜28%削減することが示された。制御指向モデルの温度予測誤差は平均絶対誤差1.8℃以下に収まりつつ、シミュレーション時間を約85%短縮。乗員快適性と電池保護の両制約を満たした上でこの削減率を達成しており、実装可能性が高い。IEEE Open Journal of Vehicular Technology への掲載を目指している。
実務への応用
物流・旅客輸送フリートのBEV化を検討する企業にとって、熱管理効率は特に冬季の航続距離・電費に直結する重要課題である。本手法の知見は以下に活用できる:①EV調達仕様策定時のヒートポンプ搭載車の優位性定量化、②フリート管理システムへのエネルギー最適化制御ロジック組み込み、③寒冷地でのBEV運用シナリオ分析における熱管理の感度評価。CasADiベースの実装がGitHubで公開されているため、社内シミュレーション環境への統合も現実的である。