研究の概要

廃プラスチックの大気圧条件下での航空機燃料(ジェット燃料)向けシクロアルカンへの転換プロセスを開発した研究(Wang・Zhang他、Nature Energy、2026年5月)。廃プラスチックは原料供給が安定しており、使い捨てプラスチックの大部分が現在埋立・焼却処理されていることを考えると、廃プラスチック由来の持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)は循環経済と航空脱炭素の双方に貢献できる。本研究は「タンデム水素化熱分解(tandem hydropyrolysis)」プロセスに新規触媒を採用し、大気圧という低コスト・高スケーラビリティな条件下で直接ジェット燃料用シクロアルカンへの転換に成功した。

主な発見・成果

従来の廃プラスチック処理技術は高圧プロセスを必要としており、スケールアップ時のコストが商業化の障壁となっていた。本研究のタンデム水素化熱分解は大気圧条件で実施可能であり、①設備コストと運転コストの大幅削減、②既存の精製インフラへの統合可能性、③廃プラスチック由来SAFの商業コスト競争力の向上、という三点で従来技術を上回るポテンシャルを示した。航空分野はバッテリー電動化が難しいHard-to-Abate(電動化困難)セクターであり、SAFが近中期の実現可能な脱炭素手段として国際的に位置づけられている。廃プラスチック由来SAFは石油由来燃料比で大幅なライフサイクルCO2排出削減が可能とされる。

実務への応用

SAF調達・Scope 3排出削減・廃棄物リサイクルに取り組む実務担当者への示唆は次の通りである。①航空会社・空港・燃料サプライヤーは、廃プラスチック由来SAFを調達ポートフォリオに追加する検討を開始すべき。大気圧プロセスの採用により商業スケールの生産コストが現実的な範囲に近づく可能性がある。②廃棄物処理・資源リサイクル事業者にとって廃プラスチックのSAF転換は新たな収益事業機会を提供する。③日本のSAF政策(2030年に国内航空燃料の10%をSAFに)に向けた国産SAF供給源として廃プラスチック由来SAFの技術評価を推進する価値がある。