研究の概要
地理的に分散したデータセンターは、立地による電力価格・冷却効率・再生可能エネルギー比率の差を抱える。本研究は、この差異を活用したピア・ツー・ピア(P2P)クラウドサービス取引市場を設計し、計算負荷と電力消費の協調最適化を実現するフレームワークを提案する。
提案市場では、ユーザーの計算ジョブを最適な地域のデータセンターに動的に配分する「計算電力協調」を実装する。電力価格が低い・再生可能エネルギー比率が高い地域のデータセンターに計算を集約しつつ、冷却効率(PUE: Power Usage Effectiveness)も考慮した多目的最適化を行う。競争均衡理論に基づく価格決定メカニズムにより、各データセンター間での公正な利益配分も保証される。
主な発見・成果
実験シミュレーションにおいて、提案手法は従来の固定割り当て型と比較してデータセンター運用利益を22.8%向上させると同時に、総エネルギー消費を3.2%削減することを実証した。再生可能エネルギーが豊富な時間帯・地域への計算集約により、電力系統の混雑緩和にも貢献する。また、P2P市場メカニズムは中央集権的な調整機関なしに機能するため、スケーラビリティと耐障害性が高い。
実務への応用
ハイパースケーラー・クラウドプロバイダーが複数拠点のデータセンターポートフォリオを運営する際、電力・計算の動的最適配分の実装参照として活用できる。特にScope 2排出量削減(再生可能エネルギー高比率地域への計算集約)とコスト削減の両立が求められる状況で有効。中小のコロケーションデータセンターがP2P連携でスケールメリットを得る新ビジネスモデルの検討にも使える知見。