やったこと

EcoNiPassが2026年2月に公開したガイドは、環境省の2025年3月ガイドラインに基づき、Scope 3排出量の算定を「2次データ(業界平均)」から「1次データ(サプライヤー直接取得)」へ移行するための4ステップと、移行によって解消される3つの構造的課題を整理した。2,000社超にCO2可視化ツールを提供してきたEcoNiPassの知見が基盤になっている。

具体的な手順・工夫

2次データが抱える3つの構造的課題

  1. サプライヤーの削減努力が反映されない:省エネ設備を導入してもしなくても同じ排出原単位が適用される。メーカーAの削減努力がバイヤー企業のScope 3に一切反映されない。
  2. 削減目標の達成が極めて困難:2次データでの削減手段は事実上「活動量を減らす」のみ。企業成長と排出削減の両立が不可能になる。
  3. サプライヤーエンゲージメントが機能しない:削減成果が反映されなければサプライヤー側の削減モチベーションが生まれない。

1次データ活用4ステップ

ステップ1:活用対象項目の選定

  • 排出量の大きいカテゴリ(例:Cat.1 購入品・サービス)から優先的に選定する
  • 全サプライヤーを一度にカバーしようとせず、重要取引先(排出量上位20〜30%)から着手する

ステップ2:サプライヤーからのデータ収集

  • 収集する1次データは2種類:製品ベース(製品別カーボンフットプリント)または組織ベース(企業別排出原単位)
  • 収集テンプレートを標準化してサプライヤーの負担を最小化する
  • SBTiのエンゲージメントターゲット達成と連動させて協力要請の根拠を強化する

ステップ3:データ品質の確認

  • 提供されたデータに算定根拠・算定境界・算定方法が明示されているか確認する
  • GHGプロトコルまたは環境省ガイドラインに準拠しているかをチェックする
  • 第三者検証済みデータを優先的に採用する

ステップ4:排出量の算定

  • 収集した1次データを自社Scope 3算定式の排出原単位として適用する
  • 2次データを使っている部分との比較で「1次データ化による削減効果」を可視化する
  • 経年での排出原単位削減率が高いサプライヤーの選定基準として活用する

得られた結果

  • サプライヤーの省エネ投資・再エネ導入が即座に自社Scope 3削減数値に反映される
  • 調達量を増やしながらでもScope 3を削減できる「成長と脱炭素の両立」構造が実現する
  • EU電池規則・CSDDD等の法制度化に向けた1次データ収集体制を先行構築できる
  • SBT達成の具体的ロードマップが描けるようになり、認定取得の実現可能性が高まる

他社が参考にすべき点

製造・消費財・自動車サプライヤーなど、Cat.1(購入品)の排出量が大きい企業向けの3つのポイント:

  1. 重要サプライヤー上位20〜30%から段階的に開始——全サプライヤーの一括移行は不可能。環境省ガイドラインも「段階的な活用」を推奨している。
  2. 製品ベースと組織ベースのデータ形式を使い分け——製品ごとの排出量が重要な場合は製品ベース、サプライヤー全体の排出強度を見たい場合は組織ベースを使い分ける。
  3. SBTiエンゲージメントターゲットと連動——法的拘束力はないが、SBTiの要件を根拠にするとサプライヤーへの1次データ提供依頼の説得力が大きく上がる。