概要
Puro.earthの強化岩石風化(Enhanced Rock Weathering: ERW)方法論が、Stripe・Google・Anthropic・JPMorgan Chaseらが出資するCarbon Removal Advance Market Commitment「Frontier」に承認された。これは2024年のGeologically Stored Carbon(地質学的炭素貯留)に続くPuro.earth方法論の2例目の承認であり、ERWクレジットの品質基準が一段と厳格化されたことを示す重要なマイルストーンだ。
実装ステップ
ERW 2025方法論の主要な新要件
要件1:独立した2つの測定手法の義務化 ERWによるCO₂除去量は、1つの測定方法だけでは不確実性が大きすぎるとして、2つの独立した測定アプローチの使用が必須となった。例:
- 地球化学的モデリング(Beerling et al.モデル等)
- フィールドサンプリング(土壌・水質の無機炭素変化測定)
要件2:サンプリングプロトコルの強化 農地への岩石粉末散布後、適切な時空間分布でのサンプリングが求められる。処理区・対照区の設計がより精緻化。
要件3:CO₂損失の会計処理改善 岩石の採掘・粉砕・輸送・散布に伴うCO₂排出(特に機械の化石燃料消費)を排出量から差し引くための方法論が明確化。ライフサイクル全体での「ネット除去量」の正確な算定が求められる。
要件4:測定不確実性管理の枠組み 計測誤差・モデル誤差・空間変動の3種類の不確実性をそれぞれ定量化し、保守的な除去量推計値を報告することを義務化。
Frontierが課した条件
- DAC(Direct Air Capture)プロジェクト:クリーンエネルギー調達原則への準拠が必要
- BECCS プロジェクト:新規バイオマス消費を最小化するプロジェクトのみ承認
使うツール・標準
- Puro.earth ERW 2025 Methodology(本稿の対象方法論)
- Frontier CDR購入基準($1.8Bコミットメントの品質要件)
- IPCC 土地利用・土地利用変化・林業ガイドライン(土壌炭素変化の計測参照)
- ISO 14064-2(プロジェクトレベルの温室効果ガス除去量の定量化)
成功のポイント
- ERWは農地への珪酸塩岩石粉末散布という比較的実施しやすい手法だが、クレジット品質の立証が困難だった。2つの独立測定手法の義務化はこのボトルネックへの対応
- Frontier承認は「最も厳格な調達基準」をクリアしたシグナルであり、プレミアム価格でのクレジット販売を可能にする
- 農業企業・肥料メーカーが主要な実装パートナーになりうる(岩石粉末を農業資材として位置づけ)
日本企業への適用
日本国内でのERW実装は研究段階にあるが、農業系企業・建設資材メーカー(珪酸塩鉱物の産出・流通拠点を持つ)にとって将来のカーボンクレジット事業として検討価値がある。国際的なクレジット品質基準の動向を把握し、J-クレジットへのERW統合に向けた方法論整備の議論に早期から関与することが重要。