研究の概要

中大型商用車(トラック・バス)の脱炭素化における「バッテリー電気自動車(BEV)」と「燃料電池電気自動車(FCEV)」のどちらが優れているかは、輸送業界の実務担当者にとって重大な選択である。本研究はNature Energyに掲載された査読付き論文で、再生可能エネルギーで駆動する場合の両技術のライフサイクルGHG排出量を、用途・走行パターン別にモデル化した。

主な発見・成果

再生可能エネルギー(グリーン電力・グリーン水素)を前提とした場合、バッテリー電気トラックがほぼすべての用途でライフサイクルGHG排出量が最も低いことが明らかになった。エネルギー変換効率の観点から、電力→バッテリー→モーターというBEVの経路は、電力→電解→水素→燃料電池→モーターというFCEVの経路に比べてエネルギーロスが小さく、CO₂削減効果が大きい。FCEVが優位性を持つ可能性があるのは、長距離・重量物輸送などBEVの充電インフラ整備が困難な特定用途に限られると指摘されている。

実務への応用

商用車隊のGHG削減計画を立案する際、「BEVかFCEVか」という問いに対して科学的根拠を持って判断できる。大多数の中距離・都市内物流はBEVが合理的選択であり、FCEVへの投資は長距離幹線輸送など限定的な用途に絞ることが望ましい。また、充電インフラ整備の先行投資がFCEVインフラ整備より費用対効果が高いことを示すデータとして、社内の脱炭素ロードマップ策定に活用できる。