やったこと

商船三井(MOL)が自社のCO₂海上輸送事業も含めて、世界と日本のCCUS(炭素回収・利用・貯留)の現状を整理。Global CCS Instituteの最新統計と日本のCCS事業法・苫小牧実証試験、さらにカーボンリサイクルの最新動向をまとめた実務向け解説記事(2025年後編)。

具体的な手順・工夫

世界のCCS現状(2024年7月時点)

  • 総プロジェクト数: 628件(2017年比約7倍の回収・貯留容量)
  • 稼働中: 50件 / 建設中: 44件
  • 年平均30%超の増加率(2015〜2017年の停滞期から回復)
  • 年間CO₂回収量: 約5,000万t(計画段階含む4.1億t)
  • 世界排出量350億tの約1%強がCCS対象

地域別分布(稼働+建設中)

地域件数
米国33件(稼働20・建設13)
中国20件(稼働14・建設6)
欧州15件(稼働5・建設10)
カナダ12件(稼働7・建設5)
中東7件(稼働1・建設6)

米国が世界をリードする背景

  1. 2021年パリ協定復帰・気候変動政策強化
  2. インフラ抑制法(IRA)による120億ドル予算確保
  3. CO₂回収への税控除「45Q」の拡張(政府がコストの大部分を負担)
  • 既存CO₂パイプライン: 約8,300km(主にテキサス州西部)
  • 2025年6月: トランプ政権が火力発電所向けCO₂回収義務規制を撤廃方針 → 短期の逆風

日本のCCS事業化

  • 苫小牧実証試験: CO₂回収・圧入・貯留の技術実証済み
  • CCS事業法: 国内CO₂地中貯留の法整備が進展

商船三井のCO₂海上輸送事業

  • 海上輸送によりCCUSバリューチェーン(回収→輸送→貯留/利用)を構築
  • 国際連携でのCO₂輸送ルート開発を推進
  • カーボンリサイクル(CO₂→化学品・燃料・コンクリート)への応用も対象

得られた結果

CCSは2017年の停滞期から急回復し、世界では年30%超のペースで新規プロジェクトが立ち上がっている。日本でもCCS事業法が整備され、苫小牧の実証試験を経て商用化フェーズに入りつつある。商船三井のような海運会社がCO₂輸送事業に参入し、CCSバリューチェーンが分業化・産業化に向かっている。

他社が参考にすべき点

大規模排出施設(製鉄・セメント・化学等)でScope1の直接削減が困難な企業は、CCSを「補完的手段」として財務計画に組み込む準備を始める時期。日本のCCS事業法が整備された現在、貯留候補地の地質調査と回収設備の設計を並行検討することが中長期戦略の実装ステップになる。商船三井のCO₂輸送サービスの商用化により、内陸の排出源から沖合貯留地への輸送コストが定量評価できるようになる見込み。