やったこと
ハーバード大学は全排出量の大部分を占めるScope3(間接排出量)に対し、購買力が最大の効果を発揮できる6領域(建設・食品・航空出張・通勤・IT機器・購買物資)に絞り込んで重点的に削減する戦略を採用した。大学のキャンパス運営という特性上、外部委託や調達に起因する排出が自家消費エネルギーをはるかに上回るため、サプライヤーへの要求水準を引き上げることが最速の削減経路と判断した。
具体的な手順・工夫
削減フレームワークは4フェーズで構成される。①データ発見フェーズでは、排出量分析ツールを用いてカテゴリ別の高インパクト機会を定量化し、6領域の根拠を確立した。②ターゲット行動フェーズでは、各領域にKPIを設定しサプライヤーに対して排出量開示と改善ロードマップの提示を義務付けた。③より深い削減フェーズでは、蓄積されたデータに基づき調達方針そのものをGHGパフォーマンス連動型に改定した。④継続改善フェーズでは、技術革新や規制変化に対応してアプローチを随時更新する。
具体的な数値目標は「食品:キャンパスダイニングのGHG排出量を2030年までに25%削減(2019年比)」「建設:新規建物の内装カーボン(embodied carbon)を従来基準比20%以上低減」。MIT・スタンフォード・イェールと共同研究体制を構築し、手法の標準化と実証エビデンスの共有を進めている。
得られた結果
食品調達においては植物性メニューの割合拡大や廃棄削減プログラムが着実に進捗。建設では内装カーボン評価ツールを全プロジェクトに導入し、設計段階での低炭素材料選定が標準化された。購買力を梃子にした市場変革モデルにより、個別の省エネ施策では届かないサプライチェーン全体の脱炭素が加速している。
他社が参考にすべき点
製造業・サービス業の企業が参考にできる核心は「Scope3を全カテゴリで均一に削ろうとしない」という優先度設計にある。購買規模が大きい組織は調達条件にGHG要件を組み込むだけでサプライヤー側の行動を変えることができる。6領域集中モデルは、自社の主要購買カテゴリを特定して同様のフレームを当てはめることで、製造業や小売業でも直接転用できる。
