やったこと

サントリーホールディングスが熊本県益城町で、「サントリー天然水の森 阿蘇」に隣接する約3,000㎡の耕作放棄山間谷状水田を湿地として再生するプロジェクトを開始。生物多様性保全と水源涵養機能向上を目的とした流域一体管理戦略の中核事業として位置づけた。

具体的な手順・工夫

1. 対象地の選定 重機が入りにくく耕作放棄されていた山間谷状水田3段を活用。天然水源に近接していることが水源涵養効果の観点から適地と判断。

2. 段階的な湛水開始 2024年4月下旬から3段の水田跡への湛水を開始。近隣河川の水を引き込み年間を通じて水位を維持する設計。2027年4月頃に全面への通年湛水を完成させる計画。

3. 流域一体管理との組み合わせ 単体の湿地再生ではなく以下の複合的な流域管理を設計:

  • 上流域:森林整備(天然水の森の既存取り組み)
  • 対象地:山間湿地の再生(今回の取り組み)
  • 下流域:冬水田んぼ計19haの実施(11月〜3月)

4. 生物多様性の把握 モニタリングにより準絶滅危惧種のカエル・在来マルタニシ・水生昆虫の生息が確認。農業との共生で生態系ネットワークが復元されていることを定量的に確認した。

得られた結果

  • 準絶滅危惧種を含む生物の生息環境が復活
  • 冬水田んぼ19haでの地下浸透量が九州熊本工場の使用水量を上回ることを確認
  • 耕作放棄地の活用を通じたTNFD(自然関連財務情報開示)対応事例として整備中

他社が参考にすべき点

水を使う製造業(飲料・食品・半導体等)は天然水源周辺の農地・里山を自社の「水インフラ」として管理するネイチャーポジティブ戦略が有効。耕作放棄地の湿地化は低コストで生物多様性評価指標(TNFD・SBTN等)への対応ができる。流域全体での水収支(涵養量 vs 使用量)を数値化することで経営層への報告・投資判断に使えるKPIが確立できる。