実装ステップ

Phase 1:CO2貯留許可証(CDSP)取得の準備

1. 申請段階からの3計画並行策定

  • NSTAへのCO2貯留許可証(CDSP)申請時には3つの運用計画の提出が必要
  • 重要:許可申請後に個別要求が来るサイクルを防ぐため、申請段階から3計画を並行策定する
  • NSTA主催の業界事前協議(Pre-application meetings)を積極的に活用する

Phase 2:3つの運用計画(2026年7月16日発行ガイダンスに基づく)

2. 貯留サイト管理計画(SSMP:Storage Site Management Plan)

  • サイト全体の運用フレームワークを記述する文書
  • 必須記載事項:CO2圧入計画・モニタリング計画・閉鎖後管理方針・リスク管理手順・緊急対応計画
  • サイト特性(地質・深度・容量)に基づくサイト固有リスクの評価を含める

3. コミッショニング計画(Commissioning Plan)

  • CO2圧入開始前の準備手順書
  • 設備の性能試験・安全確認・規制当局への事前報告事項を規定する
  • 圧入開始承認取得のための達成条件(Go/No-Go基準)を具体的に記載する
  • インテグリティテスト(坑井・パイプライン・貯留層連通性)の手順と合格基準を定める

4. 計量・測定計画(Metering & Measurement Plan)

  • 圧入量・貯留量・漏洩モニタリングの定量化プロトコル
  • データ収集頻度・品質管理手順・規制機関への報告スケジュールを定める
  • 貯留層モデルの更新サイクルと不確実性管理の方法を記載する
  • EU CCS指令や英国CCS規制が要求する定量化要件(MRV)に完全準拠する設計にする

Phase 3:段階的承認プロセスの管理

5. NSTAロードテスト協議の活用

  • NSTAはガイダンス策定段階で業界参加者と「ロードテスト」(実際のプロジェクト条件での検証)を実施済み
  • 自社プロジェクト固有の疑問点を当局に早期照会(pre-submission engagement)することで後工程の承認スムーズ化を図る
  • 業界コンソーシアム(Acorn CCS・Viking CCS等)の知見共有セッションへの参加も有効

使うツール・標準

  • 英国CCS規制(The Storage of Carbon Dioxide (Licensing etc.) Regulations 2010):法的準拠要件の基盤
  • ISO 27914:炭素回収・輸送・地中貯留の品質管理国際規格
  • OSPAR CCS指針:北海CCSに適用される規制フレームワーク
  • DNV RP-J203:CO2地中貯留の地質的リスク評価指針

成功のポイント

NSTAは本ガイダンスで「標準化されたフレームワークにより規制ボトルネックを排除し、事業者に安全な第一回CO2圧入への円滑な経路を提供する」と明言している。プロジェクト開発者にとっての最大の成功要因は許可申請段階から3計画を並行策定することである。また、業界コンソーシアムとして複数プロジェクトを束ねることで規制対話コストを分散できる。Viking CCS(2026年7月に英国政府が開発資金を承認)の規制対応手順は先行事例として参照価値が高い。

日本企業への適用

日本では2024年成立のCCS事業法に基づく国内規制整備が進行中であり、英国NSTAアプローチは経産省の運用ガイダンス設計の参照モデルになりうる。日本企業がノルウェー(Northern Lights)・英国(Acorn・Viking)のCCSプロジェクトに投資・参加する際には本ガイダンスへの準拠が必要になる。国内では苫小牧CCS・東新潟等のCCSプロジェクトが進行中であり、これらでも同等の計画書類策定が今後義務化される可能性が高い。