概要
スイスのDACパイオニアであるClimeworksが、規制コンプライアンス向けカーボン除去クレジットの新サービスを開始した。自主市場(ボランタリー)から規制対応(コンプライアンス)への移行が進む中、CORSIA(国際航空)・パリ協定6条2項・EU CRCF(炭素除去・炭素農業規制)の3つの主要フレームワークに対応したクレジット調達を支援する。
実装ステップ
ステップ1:自社が対象となるコンプライアンスフレームワークの特定
- CORSIA(国際民間航空機関:ICAO):国際線を運航する航空会社向け。2021年比超過排出量のオフセットが2027年から強制フェーズへ移行
- パリ協定6条2項(Article 6.2):ITMOs(国際的に移転される緩和成果)を国境越えで活用する企業・政府向け
- EU CRCF(EU Carbon Removal and Carbon Farming Regulation):EU ETSに永久的CO2除去(DAC等)を組み込む欧州の新枠組み
- 自社の事業領域(航空路線・EU拠点・サプライチェーン)から対象フレームワークを確定する
ステップ2:各フレームワークが認める除去技術と規格の確認
- CORSIA:CORSIA適格単位(CEU)として認定されたスキームのクレジット(VCS/Gold Standard等)
- EU CRCF:永久的除去(DAC・岩石風化促進)が中心。非永久除去(植林・土壌炭素)は別カテゴリで扱われる
- Article 6.2:相応調整(Corresponding Adjustment)が付与されたITMOsのみ有効
- 各フレームワークの認定スキームリストを確認し、調達候補のクレジットが適格かを事前に検証
ステップ3:クレジットのデューデリジェンス実施
- 追加性:そのプロジェクトがなければ削減・除去が起きなかったことを確認
- 永続性:除去されたCO2が将来漏出しないことを確認(特にDAC・玄武岩風化促進は高評価)
- 二重計上防止:ホスト国の国家目標(NDC)との整合とCorresponding Adjustmentの取得を確認
- 法務部門と連携し、規制コンプライアンス上のリスク(ミスクレーミング、虚偽広告リスク等)がないかを確認
ステップ4:規制動向のモニタリング体制の構築
- 3フレームワークはいずれも規則が急速に進化中(CORSIAは2025年規格更新、EU CRCFは2024年成立)
- 専門サービス(Climeworksのコンプライアンスモニタリング)または専門コンサルタントと連携
- 主要な改訂スケジュール(ICAO総会・EU議会・COP/CMA)を社内カレンダーに登録する
使うツール・標準
- CORSIA Eligible Emissions Units(CEU)リスト(ICAO公式)
- パリ協定6条2項 実施規則(CMA 3決定書)
- EU Carbon Removal and Carbon Farming Regulation 2024
- Verra VCS / Gold Standard / Puro.earth(除去特化型スキーム)
- Climeworks Solutions コンプライアンスポートフォリオサービス
成功のポイント
- コンプライアンス市場のクレジット要件は自主市場より厳格のため、早めの規格確認が必要
- JPMorgan・BCG・シュナイダーエレクトリックなど200社超がDAC調達に動いており、供給制約が発生する可能性がある(早期予約契約が有効)
- 除去技術はDAC(永続性高・コスト高)と自然ベース(永続性低・コスト低)でトレードオフがあり、ポートフォリオ分散が実務的
- ボランタリー市場で調達済みのクレジットが、新たなコンプライアンス要件を満たさない場合があるため、既存契約を再確認する
日本企業への適用
国際線を運航する日本の航空会社(JAL・ANA等)はCORSIA対応が最優先事項(2027年強制フェーズ)。EU拠点を持つ製造業はEU CRCFの動向を注視する必要がある。コンプライアンス向けクレジットは品質・価格ともに自主市場と異なるため、現在のボランタリークレジット調達戦略を見直し、コンプライアンス対応品への転換計画を策定することを推奨する。