やったこと
石川県小松市の老舗企業マルト株式会社(印刷・製菓、創業1953年)は、コロナ禍を機に脱炭素事業へのシフトを決断した。主力製品のネックストラップに着目し、製造過程のCO2排出量を算定したうえで、地元・能登の森林系J-クレジットを購入してオフセットする「カーボンニュートラルネックストラップ」を開発。2025年大阪・関西万博で採用実績を獲得し、複数の大手企業へ展開している。
具体的な手順・工夫
ステップ1: Scope1〜3の排出量算定 製品単位のCO2をトレースするため、原材料調達から製造・輸送までのサプライチェーン全体の排出量を算定した。この製品ライフサイクル算定が「カーボンニュートラル」と名乗るための根拠データになる。
ステップ2: 中小企業向けSBT認定の取得 大企業向けSBTiより簡易な中小企業向け認定を取得し、2030年削減目標を設定。第三者認定を得ることで対外信頼性を確保した。
ステップ3: 能登の森林系J-クレジットを購入 地元石川県・能登の森林保全プロジェクトが発行するJ-クレジットを選択。地産地消の文脈でストーリーが成立し、BtoBの発信でも使いやすい。
ステップ4: 価格を従来品と同水準に維持 クレジット購入コストを吸収し、導入企業の調達担当者が追加承認なしに選択できる設計にした。これが大手企業への横展開の最大の障壁除去になった。
ステップ5: 算定書を製品に添付 納品時に個別CO2算定書を同梱。導入企業がESG報告書・統合報告書・展示会ブースで「このストラップはCO2実質ゼロ」と具体根拠付きで発信できる仕組みにした。
その他: 自社再エネ切り替え・社員資格取得(3名)
得られた結果
- 2025年大阪・関西万博で採用
- 複数の大手企業で社員証用ストラップとして導入拡大
- 短納期(約1ヶ月)対応で機動的な採用が可能
- 今後の展開として印刷物のCO2削減量を可視化するアプリ(QRコード連動)を開発中
他社が参考にすべき点
- 製品単位のCO2算定がBtoBの差別化になる: CO2算定書を添付するだけで、取引先のESG開示に貢献できるサプライヤーとして評価される時代が来ている。製造業は主要原材料の排出係数整理から始めるのが現実的。
- 地域クレジットでローカルストーリーをつける: 市場クレジットより費用対効果が劣る場合もあるが、「地域の自然を守りながらオフセット」というナラティブはメディア露出・営業トークに直結する。
- 中小企業SBT認定から段階的に始める: 大企業向けSBTiより要求水準が低く、認定取得コストも現実的。まず「方向性を示す」ことが取引先・金融機関への信頼構築につながる。