やったこと
AI企業Appier Groupは2021年にESGコミュニケーション戦略を策定し、2022年からTCFD対応を開始。2025年度版TCFDレポートで「Scope1〜3合計4,060.7 tCO2e」を開示した。Scope3の購入物品・サービスが全体の81.7%を占めることが判明し、クラウドデータセンター利用量の増加が主因であることを特定している。
具体的な手順・工夫
ガバナンス体制の構築
取締役会が気候関連課題の監督を担う体制を整備。リスク評価結果を経営層が定期確認するプロセスを設計した。
リスク管理(3段階プロセス)
- ベンチマーク分析: 同業他社のESG開示をインプットとして業界水準の気候リスクを把握。ゼロから洗い出すより効率的で、抜け漏れも減らせる。
- 社内評価: 関係部門が自社固有のリスクを評価。
- 重要度特定: 「GHG排出への価格付け」「原材料コスト上昇」「異常気象」「ステークホルダーからの懸念増加」を主要リスクに特定。
戦略(リスク・機会の整理)
機会として「持続可能な製品・サービス開発」「情報開示の充実」「ハイブリッドワーク推進」を位置付け。ハイブリッドワーク推進はオフィス電力消費削減に直結し、Scope2削減手段として機能する。
指標と目標(実際の数値)
- Scope1〜3合計: 4,060.7 tCO2e
- 購入物品・サービス(Scope3 Cat.1): 全体の81.7%
- Scope2電力由来: 全体の12.8%
- 排出増加要因: クラウドデータセンター利用量増加
Scope2削減を優先課題として再エネ電力調達を推進中。専門コンサルタントと協働して算定手法・評価手法を継続改善中。
得られた結果
- 2022年からの継続開示により、排出源の構造(Scope3 Cat.1が圧倒的)を定量的に把握できた
- カテゴリ別分解により「調達先データセンターの再エネ化がもっとも効果的な対策」という優先度が明確化
- 段階的なアプローチにより、スタートアップ規模でも無理なく体制構築が可能だと実証
他社が参考にすべき点
- IT・SaaS企業はScope3 Cat.1(購入物品・サービス)が支配的: クラウドサービス・ハードウェア調達が主要排出源になる。まずクラウドプロバイダー(AWS・GCP・Azure等)のカーボン開示データを収集することが最優先。
- 同業他社ESGレポートのベンチマーキングから始める: ゼロからリスク洗い出しをする前に、同業の開示内容を参照すると工数を大幅削減できる。
- 「段階的な精度向上」という姿勢を宣言する: 完璧なデータが揃う前に開示を始め、毎年改善するコミットを表明することが市場評価に直結する。
- 外部コンサルとの協働は算定精度の向上に有効: 特にScope3のカテゴリ設計と係数選定は方法論の理解が必要で、最初の1〜2年は専門コンサルの活用が費用対効果が高い。