やったこと

日本コカ・コーラとコカ・コーラボトラーズジャパンは2026年7月、埼玉県飯能市と森林保全協定を締結した。対象は白岩・山中地区の市有林298ヘクタールで、期間は2027年1月から2035年12月まで9年間。多摩工場(コカ・コーラボトラーズジャパン)周辺流域における水源涵養を目的とし、山梨県丹波山村・東京都八王子市に次ぐ3件目の流域別協定となる。

具体的な手順・工夫

対象林の課題分析 対象林298haのうち75%が天然林だが、残り25%の人工林(スギ・ヒノキ)で密度管理不足による水源涵養機能の低下が課題だった。また、ニホンジカによる食害で下層植生が失われた区域も確認されていた。

実施内容(5項目)

  1. 間伐作業: 密植したスギ・ヒノキの間伐を実施し、林内に光が入ることで下層植生を回復させる。水の浸透・保持能力が向上する。
  2. 獣害対策: ニホンジカによる食害エリアに防護策を設置し、植生回復を支援。
  3. 針広混交林への転換: 単一樹種(針葉樹)の人工林を、広葉樹と混在させた多様な構成に段階的に転換。生物多様性の向上と風倒リスクの分散が目的。
  4. 危険木の伐採と下草管理: 崩落リスクのある立木の除去と周辺管理を継続実施。
  5. 生物多様性モニタリング: 植生・野生生物の変化を定期的に観測し、保全効果を定量評価。

連携体制 西川広域森林組合などの地域専門組織と連携し、技術面・実施面をサポート。飯能市が森林保全予算を積極計上する方針で、行政・企業・地域が三位一体で動く体制を構築。

全国展開の方針 コカ・コーラシステムは全国22工場の流域で「製品使用水量の100%以上を自然に還元する」水源涵養活動を実施中。流域ごとに異なる課題に応じた個別対応型が原則。

得られた結果

  • 対象森林の水蓄え能力: 年間約173万立方メートル(林野庁試算)
  • これは埼玉県民約732万人の1日生活用水量に相当
  • 丹波山村・八王子市に続く3件目の流域協定として水源保全ネットワークを拡大

他社が参考にすべき点

  • 流域ベースで考える: 工場・事業所の「流域」にある森林・水系を特定し、どこの水を使っているかを起点に取り組みを設計する。「全国一律」より「流域別の課題対応」が効果的。
  • 自治体の市有林を活用する: 管理放棄された市有林に民間資金を投入するスキームは、行政コスト削減と企業のネイチャー実績の両立が可能。自治体との長期協定(5〜10年)が信頼構築と継続実施の前提。
  • TNFDの「場所依存(location-specific)」要件への対応になる: TNFDが求める「特定の場所での自然関連リスク開示」を満たすうえで、流域別の森林保全活動はそのまま開示コンテンツになる。
  • 水蓄え能力を定量化して開示する: 「何haの森林を保全した」より「年間XX万m³の水涵養」という機能値で示す方が、ステークホルダーに伝わりやすい。林野庁の試算ツールや森林組合と協力して算出可能。