やったこと
Eco-Business誌(2026年1月23日付)が報じたMETI・GX推進法改正に基づく排出量取引制度(ETS)の価格帯設定の内容を整理し、企業が2026年度に取るべき対応を実務観点でまとめた。
具体的な手順・工夫
GX排出量取引制度の骨格(2026年度版)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象企業 | 年間10万tCO2以上排出の約300〜400社(新日本製鐵、トヨタ、JERA等) |
| カバー率 | 国内排出量の約60% |
| 価格下限(フロア) | 1,700円/tCO2(J-クレジット歴史価格を参考) |
| 価格上限(シーリング) | 4,300円/tCO2(石炭→LNG燃料転換コストを基準) |
| 2026年度の役割 | 準備年(MRV・市場ルール確定) |
| 排出枠取引開始 | 2027年秋(GX推進機構を通じた集中市場) |
価格帯の設計思想
- 下限(1,700円):既存J-クレジット価格を参照し、インセンティブの最低ライン確保
- 上限(4,300円):石炭→LNG転換コストを反映し、価格高騰による国際競争力低下を防止
- 上限未達の場合:政府が排出枠を市場から回収して希少化
- 上限超過の場合:企業は上限価格払い込みで排出義務を代替履行可能
価格帯の調整メカニズム 2027年度以降、フロア・シーリングともインフレ率+3%で毎年引き上げ予定(企業の割引率を超える水準を意図)。
国際比較
| 市場 | 概算価格レンジ |
|---|---|
| 日本(GX-ETS) | 1,700〜4,300円(約11〜27米ドル) |
| 中国ETS | 約7〜10米ドル |
| 韓国ETS | 約9〜13米ドル |
| カリフォルニア(CCA) | 約30〜40米ドル |
得られた結果
GX-ETSは2026年度のMRV義務化→2027年秋の取引開始というスケジュールが確定。価格帯の設計は過度な価格変動を抑えつつ、低炭素投資のインセンティブを確保する「ガードレール型」ETS。
他社が参考にすべき点
- 2026年度は「準備年」=排出量計測の質が鍵。MRVの精度が粗いと2027年以降に排出枠不足が顕在化するリスクがある。今から第三者検証フローの整備を推奨。
- 価格上限4,300円は一つの投資基準。排出削減投資のNPV計算で炭素価格4,300円未満で回収できるプロジェクトは、ETS開始前に着手する合理的根拠になる。
- J-クレジット価格との連動。価格下限がJ-クレジット価格(1,700円水準)に連動しているため、国内クレジット調達コストとの比較が重要な経営判断材料になる。