やったこと
自然目標(SBTs for Nature)の取得は世界でも承認済み5社にとどまるが、キリンホールディングスが2026年7月にAPAC企業初の第三者検証を取得。承認済み5社(いずれも欧州企業)と日本企業の初期事例から、実装に至るパターンを分析した。
具体的な手順・工夫
共通項1:制度形成段階からの参画
- ケリング・GSK・ホルシム・H&Mは「初期企業パイロット」に参加し、手法が未完成の段階から取り組んだ
- 試行を通じて社内の実装能力を蓄積したことが、完成後にゼロから始めた企業より有利に働いた
共通項2:流域・原材料産地の特定と追跡
- ケリング(皮革):イタリア・アルノ川流域の拠点を特定し「2030年までに取水量21%削減」を設定
- H&M(綿・羊毛):インド・南アフリカの原材料産地でランドスケープエンゲージメント目標を設定
- ホルシム(セメント):「Aqueduct」「IBAT」ツールで水リスク高地域と生物多様性重要拠点を特定し、4流域で淡水目標を設定
共通項3:測定が容易な指標から段階的に目標化
- パイロット承認率:取水量目標90%、水質汚染目標40%
- 取水量はメーター・請求記録から把握でき既存モデルが使いやすい
- 水質汚染・エンゲージメント目標は地域データ・協働体制構築が必要で難易度が高い
共通項4:限定範囲から段階的に検証・公開
- ホルシム・URWは淡水目標のみ、H&Mは土地目標のみで承認取得
- 「Accelerated Pathways」制度で特定事業単位から着手が可能
キリンHDの事例(APAC初)
- ステップ1・2で「直接操業100%、調達原材料68%」を評価
- スリランカ紅茶、オーストラリア・米国醸造拠点で既存施策を科学的優先順位と照合
得られた結果
- SBTNプロセスはStep1(分析・評価)から5(検証)まで5段階あり、9社がStep1・2を完了・公開
- 承認(全5段階完了)に至った企業は現時点で5社のみ(いずれも欧州)
- キリンHDはStep1・2完了でAPAC企業初の第三者検証を取得
他社が参考にすべき点
- TNFDや既存調達データから始める:ステップ1は自社の自然への依存・影響を分析するフェーズで、既存のTNFD開示データや原材料調達データが流用できる
- 「測れるところから」が鉄則:取水量など定量化しやすい指標で先に目標・検証を進め、難しい指標は後から追加する
- 日本企業は2026年秋から海洋目標のパイロット開始予定:早期参画を検討するタイミング
- フランスの「EEN」プログラムや英・独のアクセラレーターなど、国際的な支援プログラムを活用することで実装コストを下げられる