やったこと
NTT西日本グループの地域創生Coデザイン研究所が2025年2月に公開した資料をもとに、日本企業によるJ-クレジット(特に森林吸収系)の購入・活用事例5件と大手企業の購入継続事例5件を整理。J-クレジット制度の仕組み・市場動向・活用意義・具体的オフセット手順を実務視点でまとめた。
具体的な手順・工夫
事例①ヤマト運輸(カーボンニュートラル配送)
- 手順: 集荷・仕分け・配達等のGHG排出量を先に削減し、削減しきれない残余排出量をカーボンクレジットで全量オフセット。2022年度より開始。
- 活用証書: 再エネ系クレジット(VCS:インド・中国等)。長期的に吸収系(除去系)比率を高め、2050年度は全量吸収系へ移行予定。
- オフセット量: 246万 t-CO₂(2022年度実績)。
事例②大阪ガス(大阪・関西万博 カーボンニュートラルガス供給)
- 手順: 万博会場への都市ガス供給に際し、他のガス事業者等からJ-クレジット(バイオガス関連)やクリーンガス証書を調達し環境価値を付加。e-メタン(水素+CO₂製造の合成メタン)の製造・供給も並行実施。
事例③日本旅行(JRセットプラン Carbon-Zero)
- 手順: 新幹線・特急利用のCO₂排出量相当分を森林吸収系J-クレジットでオフセットした旅行プランを2020年度より販売。2024年度には韓国観光公社と連携し海外旅行商品にも拡大。
- オフセット量: 累計1,615 t-CO₂(2021〜2024年6月)。年間目標は1,000 t-CO₂。
事例④ミドリ安全(カーボンオフセット・ユニフォーム)
- 手順: ユニフォーム製造工程のCO₂(1着あたり約3kg)をJ-クレジット・VCS(森林吸収系・再エネ系)でオフセットして販売。購入企業はCSR活動・温対法対応でアピール可能。
事例⑤NTT西日本(地域林業DX × J-クレジット創出・購入)
- 手順: 宮崎県諸塚村・岡山県真庭市・愛知県岡崎市・佐賀県太良町などで自治体・森林組合と連携し、森林情報のデジタル化(ドローン空撮・衛星データ・クラウド)を実施。創出されたJ-クレジットを自社が継続購入(耳川広域森林組合分を主に購入予定)。
- 評価: 第32回地球環境大賞 総務大臣賞受賞(2024年3月)。
大手企業の継続購入事例(2022〜2024年)
| 企業 | J-クレジット所有者 | 取組内容 |
|---|---|---|
| ENEOS HD | 愛媛県久万高原町 | 自治体と共同創出・全量買取 |
| 日本生命 | 北海道森町 | ネットゼロ向けに継続購入 |
| マツダ | おかやまの森整備公社 | 中国地域の森林吸収系を購入 |
| LINEヤフー | 田島山業(大分県) | 10年間毎年1,500 t-CO₂継続購入 |
得られた結果
森林吸収系J-クレジットは、カーボンオフセット手段としての機能に加え、①水源涵養・生物多様性・地域経済への貢献(Co-benefit)、②CSR・ESGの訴求素材、③就活生への訴求(SDGsへの貢献を重視する若い世代)という3種類の付加価値を持つ。2030年以降は省エネ・再エネ系クレジットの供給余地が縮小するため、森林吸収系クレジットの需給が逼迫するリスクが高い。
他社が参考にすべき点
- 購入タイミング: 森林吸収系J-クレジットは供給者と早期にマッチングし継続購入契約を結ぶことが価格高騰前の有利なポジション確保につながる(LINEヤフーの10年契約が参考事例)。
- 地域性の活用: 工場・拠点がある地域の森林組合と連携することで「地元の森を守るストーリー」が構築でき、CSRレポートや社員研修(間伐体験)に活用可能。
- プロダクト連携: ユニフォームや旅行プランのようにクレジット付き商品を販売することで、Scope3削減の川下施策としても機能させられる。
- DXで創出側に: 自治体・森林組合とのデジタル連携でJ-クレジット創出から関与するNTT西日本モデルは、ICT企業・コンサル・SIerが参考にできる。