やったこと

日本は世界第3位の地熱資源を持ちながら開発が遅れてきた最大の原因は「地域との合意形成」にある。Sustainable Japanが調査した熊本県小国町(わいた地区)・北海道森町(濁川地区)・岩手県八幡平市の3事例は、成功する地域共生モデルの設計原則を具体的に示している。

具体的な手順・工夫

わいた地区(熊本県): 住民が事業主体化する構造 過去の大規模開発で温泉資源への懸念から地域が分裂した経験を経て転換。地域住民が「合同会社わいた会」を組成し事業主体となり、外部事業者(ふるさと熱電)が資金・技術を補完するハイブリッド構造を採用。月1回の泉源モニタリング説明会・住民全体会議で透明性を確保し、売電収益の配分権と温泉分湯・床暖房への地熱活用も住民が決定する。

濁川地区(北海道): 熱のカスケード利用で農業収益に転換 発電用蒸気→バイナリー発電(2MW、2023年開始)→園芸ハウス温水供給という多段階活用(カスケード利用)を実装。地熱温水を利用したトマトは森町の農産物販売額1位の基幹作物に成長した。

八幡平市(岩手県): 地域インフラとして位置づけ 1971年の温泉供給開始から段階的に拡大し、ホテル・病院・農業用ハウスなど700カ所以上への温水供給インフラとして確立。「エネルギー源」でなく「地域インフラ」として位置づけることで住民理解を獲得してきた。

得られた結果

JOGMECは2026年6月に「地熱モデル地区」認定制度を拡充し、調査段階からの地域共生設計を制度化。3事例の共通点として「経済・資源・コミュニティの三位一体設計」と「リスク・リターン・意思決定権の明示的な配分」が不可欠であることが明確化された。

他社が参考にすべき点

地熱・バイオマス・風力など地域密着型再エネ事業者が直接応用できる。「地域にいくら還元するか」より「誰がリスク・リターン・意思決定権を持つか」の設計が合意形成の核心。地域住民を「受益者」でなく「事業参加者」として組み込む構造設計が成功の鍵となる。探査・掘削段階の高リスクを外部事業者が担い、収益段階で地域が主体となる段階的分担が有効。