概要
2026年8月20日、ATECがバングラデシュで「Article 6.2承認書(Letter of Authorization)」を取得し、クリーン調理プロジェクトによるITMO(国際移転緩和成果)の発行に向けた初の認可を受けた。Gold StandardのMECD(計量・計測エネルギー調理機器)手法とIoTセンサーを組み合わせた計測体制が高品質なクレジット設計の核心。グローバルサウスでのArticle 6.2実装の再現可能テンプレートとして注目される。
プロジェクト概要
- プロジェクト名: バングラデシュ電気調理プログラム
- 対象地域: チッタゴン管区
- 方法論: Gold Standard MECD(Metered and Measured Energy Cooking Devices)
- 目標: 2030年までに129万tCO2e削減
- 初回クレジット発行予定: 2026年12月
- 主管省庁: バングラデシュ環境・森林・気候変動省
実装ステップ
Step 1:ホスト国政府との Article 6.2 LoA取得
- 必須要件: ホスト国政府が国内NDC(国家決定貢献)と二重計上を防ぐ「対応調整(Corresponding Adjustment)」を国際交渉で確定していること
- バングラデシュの場合: 環境省が公式LoAを発行し、NDC調整を明示
- 実践的アドバイス: プロジェクト設計初期段階(18ヶ月前以上)から政府折衝を開始する
Step 2:Gold Standard MECD手法の採用
- ベースライン設定: 各世帯の従来調理(バイオマス・化石燃料)エネルギー使用量を計測
- IoTセンサーの設置: 誘導調理器にIoTセンサーを設置し、電力消費をリアルタイム計測
- 削減量の算出: ベースライン消費量 − 実測消費量 = 削減量(MWh)→ CO2換算
- デジタル監査証跡の確立: 全計測データをクラウドで保管し、第三者検証(VVB)が遠隔監査可能な体制を構築
Step 3:二重計上防止の対応調整条項の実装
- LoAに「対応調整」の発動条件と金額・量を明記
- ホスト国の国家GHGインベントリからITMO移転分を差し引く仕組みを政府と合意
- 買い手国・国際レジストリ(ICROA等)との三者間追跡体制を構築
Step 4:クレジットの発行・移転
- 2026年12月の初回クレジット発行後、買い手企業(Scope 3またはVoluntaryオフセット目的)へ移転
- 移転先の国際レジストリで対応調整が反映されていることを確認
使うツール・標準
- Gold Standard MECD手法書: 計量・計測型調理機器の排出削減算定標準
- Article 6.2 パリ協定実施規則(2021 Glasgow決定): ITMOの発行・移転・対応調整の国際ルール
- ICROA(International Carbon Reduction and Offset Alliance): クレジット品質認証
- IoTエネルギー計測デバイス: リアルタイム消費量計測・クラウド送信
成功のポイント
- IoT計量が「クリーン調理プロジェクトの計測不確実性」という従来の最大批判を解消。品質問題のある過去の調理プロジェクトとの差別化要因
- 「対応調整」条項なしのArticle 6.2 LoAは国際市場で取引できない。政府との合意内容を契約書で明文化する
- バングラデシュモデルはインド・サブサハラアフリカ等の大規模クリーン調理市場で再現可能。同じ手法・手順を適用できる
日本企業への適用
- 日本企業がArticle 6.2 ITMOを購入する場合の品質確認指標として、①LoA取得有無②対応調整条項の存在③IoT/MRV体制の3点を必須チェック項目とする
- JCM(二国間クレジット制度)で日本が実施するクリーン調理プロジェクトにも、Gold Standard MECDとIoT計量の組み合わせを採用することで国際流通性を確保できる
- Scope 3カテゴリ11(製品の使用)として調理機器を製造・販売する企業は、使用段階の排出削減をインセッティングとして計上するスキームとしても応用可能
