やったこと

清水建設が220年の建設業の知見を活かし、「超建設」として非建設事業に進出した2事例を紹介する。①富山県入善町での海洋深層水を活用した多段階カスケード事業、②50億円のSEP(自己昇降式作業台船)船投資による洋上風力事業への参入だ。

具体的な手順・工夫

事業1: 海洋深層水カスケード活用(富山県入善町)

水深200m超から水温2〜3℃の冷海水を取水し、複数の用途に段階的(カスケード)活用することで、従来の冷熱需要を化石燃料に依存せずに供給する。

3段階カスケードの仕組み:

段階活用内容効果
第1段階近隣の米飯製品工場の空調・冷却化石燃料依存の空調を海洋深層水で代替・省エネ
第2段階14〜15℃に温まった水を牡蠣養殖場へ供給清潔で栄養塩(リン・窒素)豊富な深層水で牡蠣の純化率99%を達成
第3段階さらに下流でのアトランティックサーモン陸上養殖への活用(計画中)海水が清潔なため魚病リスクを最小化

深層水の特性が鍵: 深海水は「清潔(菌が少ない)かつ栄養塩(リン・窒素)が豊富」という特性を持つ。これにより食品工場の省エネと、高品質食品生産を同時に実現する事業設計が可能になった。

事業2: 洋上風力SEP船投資(約50億円)

大型洋上風力タービン設置専用の自己昇降式作業台船「BLUE WIND」に約50億円を投資。台湾での工事実績を積み上げながら、日本市場での洋上風力本格化に備えるポジショニング戦略をとっている。

日本特有の課題と対応: 欧州の北海と異なり、日本の海底地盤は「岩盤・粘土・砂が混在する複雑な地層」が多い。欧州基準の標準工法が通用せず、日本独自のカスタムエンジニアリングが必要となる。台湾案件での経験をデータ化し、日本版施工手順の開発を進めている。

得られた結果

  • 海洋深層水を用いた食品工場の空調脱炭素化と、養殖業の高付加価値化を同時実現
  • 牡蠣の純化率99%達成による付加価値創出(深層水養殖牡蠣として市場差別化)
  • SEP船「BLUE WIND」の台湾実績により国内洋上風力入札への参入準備完了

他社が参考にすべき点

建設・土木・インフラ企業は「既存のエンジニアリング能力を再エネ・循環利用に転用する」というアプローチで新規GX事業を立ち上げられる。特に深層水・地下水・廃熱などの「地域固有の無尽蔵エネルギー資源」を起点にしたカスケード事業は、地域密着型の建設業が強みを発揮しやすい分野だ。洋上風力では欧州技術の「そのまま輸入」ではなく、日本固有の地盤・気候に合わせたカスタマイズが競争優位の源泉になる。