研究の概要

太陽光発電(PV)と蓄電池(BESS)を組み合わせたグリッド連系マイクログリッドは、脱炭素電力供給の中核インフラとして急速に普及している。しかし、太陽光出力の不確実性(天候依存)と経済的最適運用の両立は実務上の大きな課題だ。予測精度が低いと蓄電池の充放電スケジュールが非効率となり、余剰電力の系統逆潮流や電力購入コストの増大を招く。

本研究は、LSTM(Long Short-Term Memory)ニューラルネットワークを用いた高精度PV発電量予測モデルと、電力コスト最小化・自家消費最大化・系統注入最小化を同時に最適化するマルチ目的スケジューリングを統合したフレームワークを構築し、グリッド連系PV-BESSマイクログリッドへの適用効果を定量的に評価した。

比較手法として、理論的上限となる「完全予測」、伝統的な「パーシステンスモデル(前日同時刻の値を予測値として使用)」、そして提案手法の「LSTMベース予測」の3案を同一マルチ目的スケジューリングフレームワーク下で評価した。

主な発見・成果

  • LSTM予測精度:パーシステンスモデルに比べてRMSE(平均二乗誤差の平方根)を6%低減。完全予測には及ばないが、実運用レベルで有効な精度を実現
  • 自家消費率の改善:パーシステンスモデル使用時の78.1%から84.5%へと6.4ポイント向上(完全予測時は85.9%)
  • 系統逆潮流の大幅削減:系統への電力注入量をパーシステンスモデル比で82%削減。再エネ余剰による系統負荷を抑制できる
  • トレードオフの明確化:予測精度の向上はBESSの利用率を高め、蓄電池の充放電サイクル数が増加するため、バッテリー劣化・寿命短縮のリスクが伴うことを定量的に示した

実務への応用

工場・商業施設・公共施設でのオンサイトPV+蓄電池システムの導入・運用に直接適用できる知見が多い:

  1. 自家消費率の最大化:電力購入コストを削減しながらScope 2排出量を低減するために、LSTM予測ベースの前日スケジューリングを採用することが推奨される
  2. 系統連系コストの削減:逆潮流抑制により、太陽光余剰時の逆潮流による基本料金・系統利用料の増加を防止できる
  3. 蓄電池寿命管理:サイクル数の増加が予測されるため、バッテリーマネジメントシステム(BMS)への寿命劣化モデルの組み込みが重要。導入計画段階でLCCの試算に盛り込むべき
  4. 将来課題:負荷側予測の統合や確率的不確実性の陽的なモデル化により、さらなる最適化の余地がある