実装ステップ

2026年6月のSBTi Corporate Net-Zero Standard改訂により、企業はサプライチェーン排出(Scope3)の算定に環境属性証書(EAC)と市場型メカニズムを活用できるようになった。PepsiCoの実装事例を参考に手順を整理する。

ステップ1:SBTi改訂版における「Activity Pool」アプローチの理解 従来は直接の取引関係のあるサプライヤーのみを対象としていたが、改訂後は「調達地域内のサプライヤーの活動」からも排出削減量をカウントできる。EACはこの「Activity Pool」の証書として機能する。

ステップ2:対象とするEACの種類を決定

FLAG(農林業・土地利用)系EAC

  • 再生農業・カバークロップ・土壌炭素固定などのプロジェクトに対応するクレジット
  • GHGプロトコルの2026年1月FLAG排出ガイドラインに準拠した会計が必要
  • PepsiCoは再生農業イニシアチブで約15万tCO₂のFLAG排出削減をカウント

エネルギー系EAC

  • 再生可能エネルギー証書(REC・GO等)を拡張したサプライヤー向け証書
  • PepsiCoはパッケージングサプライヤーの再エネ調達をカバーする約69万tCO₂の削減をカウント

ステップ3:ブロックチェーン追跡による透明性確保 PepsiCoは低炭素アンモニア(アイオワ州工場から3万tCO₂相当)のEACをS3 Marketsのブロックチェーン基盤で追跡。ダブルカウントを防止し、監査可能性を確保。

ステップ4:Climate Accounting Statementへの記載

  • 削減量と除去量を分けて報告(GHGプロトコルに準拠)
  • PepsiCoは32万t超の炭素除去もFLAGガイドラインに基づいて記録
  • 市場型メカニズムによる削減量は、物理的削減量と分けて開示

ステップ5:SBTi認定との整合確認 EAC活用は「SBTi認定目標の達成手段」として認められているが、物理的削減(エネルギー効率改善・低炭素調達切り替え等)との組み合わせが必要。EACのみで全量をカバーすることはできない。

使うツール・標準

  • SBTi Corporate Net-Zero Standard(2026年6月改訂版)
  • GHGプロトコル FLAG 排出ガイドライン(2026年1月)
  • EAC発行・追跡:S3 Markets(ブロックチェーン)、Gold Standard、Verra等
  • 農業Scope3算定:LEAP(Livestock Environmental Assessment and Performance)

成功のポイント

EACは「追加性」が証明されているプロジェクトから調達することが信頼性の鍵。自社のScope3ホットスポット(農業・輸送・包材等)を特定してから、そのセクターのEACを戦略的に調達する。単なるオフセット購入ではなく、サプライヤーとの共同プロジェクトとして実施することで、実態に即した排出削減に近づく。

日本企業への適用

SBTi認定を取得している、または取得予定の日本企業で農業Scope3(食品・飲料・化学等)や包材Scope3(製造業全般)が大きい場合、EACを使った削減加速が現実的な選択肢となった。日本国内のJ-クレジット方法論との整合を確認しながら活用を検討する価値がある。