実装ステップ
中国・河北工業大学の研究チームが、商業ビルの暖冷房に空気熱源ヒートポンプと蓄熱タンクを統合した「ASHPCES(Air-Source Heat Pump Coupled Energy Storage)システム」を設計・実証した。天津市の6階建てオフィスビル(延床面積10,030m²)での導入事例を以下に示す。
ステップ1:システム構成の決定
- 空気熱源ヒートポンプ(リバーシブル型):6台(各146kW暖房/130kW冷房)
- 蓄熱タンク:1,010m³の成層型水槽(断熱材100mm発泡体)
- 循環ポンプ・制御バルブ・ファンコイルユニットを接続
- ポイント:ピーク負荷基準のサイジングを廃止し、蓄熱前提で小型化(6台→11台から削減)
ステップ2:電力料金の時間帯別活用(TOU運用)
- 夜間低料金時間帯(23:00〜07:00):ヒートポンプをフル稼働し、冬は温水・夏は冷水を蓄熱
- 昼間(08:00〜18:00):蓄熱から優先供給、ヒートポンプは中間料金帯のみ補助稼働
- 高料金ピーク時間帯:蓄熱のみから供給し、ヒートポンプを停止
ステップ3:費用削減効果の確認
- 初期設備費:29.7%削減(CNY 342万→241万)
- 年間運用費:51.4%削減
- 年間電力消費量:21.9MWh削減
- 年間CO₂排出量:約8.8%削減(約17.6tCO₂)
- 投資回収期間:約3.57年
- ライフサイクルコスト削減:38.37%
ステップ4:制御システムの最適化 蓄熱残量センサーと電力需要予測を連動させ、翌日の気温・電力料金予測に基づいてヒートポンプの運転スケジュールを自動調整する。
使うツール・標準
- 成層型蓄熱タンク設計(ASHRAE基準準拠)
- 時間帯別電力料金(TOU)契約の活用
- ヒートポンプ統合制御ソフトウェア(BMS連携)
- ライフサイクルコスト(LCC)計算モデル
成功のポイント
ピーク負荷でサイジングする従来設計を捨て、蓄熱量を前提に機器を小型化することが最大のコスト削減要因。夜間電力の安い地域・国ほど効果が大きい。初期設計段階から蓄熱タンク容量と電力料金構造を同時に最適化することが鍵。
日本企業への適用
日本の商業ビルは電力の時間帯別料金契約(夜間割引プラン)を活用できる環境にある。冷暖房負荷の大きいオフィス・ホテル・病院での導入検討が有望。省エネ法対応・GHG算定でのScope2削減にも直結し、脱炭素改修の費用対効果を高める手法として有効。
