研究の概要
英国の電力系統は再生可能エネルギーが支配的になる中で、リアルタイムの需給調整(バランシングメカニズム、BM)において誰が「限界価格形成者」(マージナルユニット)となるかが大きく変化している。本研究は2023〜2025年の50,684件の30分決済期間のデータを使い、英国BMにおける入札・応札の限界点に着いたユニットを個社・ユニット単位で特定・分類した実証研究。
主な発見・成果
- 蓄電池(Battery Storage)の限界入札(bid-active、過剰供給時の吸収)参加割合は2023年の0.8%から2025年の36.2%へと急増
- 限界応札(offer-active、不足供給時の供給)でも3.2%から26.9%へ上昇し、複合サイクルガス発電をbid側で、揚水発電をoffer側で急速に代替
- 蓄電池100MW増加あたり、四半期の限界シェアは入札・応札それぞれ0.55・0.48ポイント上昇(固定効果推定)
- 2025年時点で蓄電池の市場行動は量的に代替するユニットと比べてMWh当たり約£9〜10有利だが、短供給・高価格期間(上位5%)では12.9ポイント過少参加している
- 個別蓄電池はプライステイカーとして行動しているが、フリートとして見ると既にルーティン価格形成に内生化されている
実務への応用
- 蓄電池を活用した需給調整ビジネスを検討する事業者は、本研究が示す「高価格期間での過少参加」に着目すると収益機会のギャップを確認できる
- 日本の容量市場・需給調整市場の設計において、英国の事例は蓄電池普及が価格形成をどう変えるかの先行指標として価値がある
- カーボンプライシング・Scope 2排出量計算において電力限界排出係数(marginal emission factor)の算定基礎は「誰が限界ユニットか」に依存するため、この分析手法は日本の排出係数高度化にも応用できる
