はじめに
英国政府(HM Revenue & Customs)は、2027年1月1日から施行する英国カーボン国境調整措置(UK CBAM)について、海外カーボン価格制度の暫定認定リストを公表しました。EU ETS・中国・日本・韓国・ニュージーランド等の15制度が含まれ、対象企業は今から約4ヶ月で準備を完了する必要があります。
UK CBAMの仕組み
対象セクター
以下の炭素集約型産品の輸入が対象:
- 鉄鋼
- アルミニウム
- セメント
- 肥料
- 水素
基本原則
「英国生産者が支払う炭素価格と同等の水準を輸入品にも課す」ことで、炭素リーケージを防ぐ制度です。EU CBAMと同様の思想ですが、英国独自の運用ルールがあります。
免除(リリーフ)の考え方
対象国の炭素価格制度に基づいて実際に支払った炭素コストを証明すれば、その分の英国CBAM負担を軽減できます。
重要な注意点:
- 無償割当(free allowances)で賄われた排出量は対象外
- リベートや払い戻しがある場合はその分を差し引く
- 「理論上のカーボン価格」ではなく「実際に支払った額」が基準
認定された15の価格制度(暫定リスト)
公式リストには以下が含まれます:
- EU ETS(欧州排出権取引制度)
- 中国 全国碳排放权交易市场
- 日本のカーボンプライシング関連制度
- 韓国排出権取引制度(K-ETS)
- ニュージーランドETS
- オーストラリアSafeguard Mechanism
- その他9制度
政府は「今後も評価を進め、リストを拡充する可能性がある」と明示。
実装ステップ(2027年1月までの5ステップ)
ステップ1:対象製品の特定
- 輸出する製品が鉄鋼・アルミ・セメント・肥料・水素のいずれかに該当するか確認
- HMRCの分類コードと自社製品の分類を照合
ステップ2:適用可能な価格制度の確認
- 自国(または製造国)のカーボン価格制度が認定リストに含まれるか確認
- 日本の場合、GXリーグ排出量取引制度や省エネ法・温対法の関連コストが対象になり得る
ステップ3:実際の炭素コストの記録開始
- 支払った炭素価格の証跡(ETS購入記録・炭素税の納付証明)を今から整備
- 無償割当分は除外して計算する体制を構築
ステップ4:HMRCへの申告システムの準備
- 対象製品の輸出企業は輸入者(英国の取引先)への情報提供義務が生じる
- 排出量データと支払炭素コストをHMRCが要求する形式で提出できる体制を構築
ステップ5:記録保管体制の整備
- 申告根拠となる全文書を保管(製品分類・排出量・炭素コスト支払証明)
- HMRCによる事後確認に対応できる5年以上の保管を推奨
使うツール・標準
- GHGプロトコル Scope1・2:製品製造に伴う排出量の計算根拠
- 英国HMRC CBAM公式ガイダンス:対象品目の確認と申告様式
- ISO 14064-1:GHG算定・報告の国際標準(申告根拠として有効)
- EU CBAM:英国と並行して2026年から本格移行。二重対応が必要な場合は共通フォーマットで
成功のポイント
- 「理論値」でなく「実支払い」の記録が命:いくら制度が認定されていても、実際に支払った証跡がなければリリーフが受けられない
- 4ヶ月は短い:特に複数製品・複数サプライヤーを抱える企業は今すぐ体制整備を開始
- リストは暫定・拡充予定:現時点で自国制度が含まれていない場合も、今後の交渉次第で変わる可能性あり
日本企業への適用
- 英国向けに鉄鋼・アルミを輸出している日本企業は2027年1月までに対応が必須
- EU CBAMも2026年から本格課金が始まるため、EU+UK両方のCBAMに同時対応する体制が効率的
- GXリーグでの炭素価格支払い実績を英国HMRCが認定するかは継続確認が必要
