やったこと

電通総研が2026年、国内企業500社を対象に「2026年 ESG企業動向調査」を実施した。ESGレポート等の開示率は72.6%に達し、作成率は94.0%まで拡大している。一方でGHG算定・ESG管理ツールを導入済みの企業(52.4%)のうち、**64.7%が「表計算ソフトを使う作業が半分以上を占める」**と回答。ツールを入れても表計算依存が続く実態が明らかになった。

具体的な手順・工夫

表計算依存が続く原因の構造を分析すると、以下の3層が積み重なっている。

第1層:拠点間のデータ形式・粒度の不統一(49.0%) 各拠点が独自フォーマットでエネルギーデータを管理しているため、ツールに入力する前の「前処理」に工数がかかる。この前処理はほぼ例外なく表計算で行われる。

第2層:ツールの開示項目対応不足(38.5%) SSBJ・GRI・TCFD等の開示項目がツールで網羅されておらず、未対応部分を表計算で補完する構造になっている。特にScope3カテゴリ別算定の細粒度対応が遅れている。

第3層:他システムとの連携不足(32.8%) ERP・購買システム・エネルギー管理システムとのAPI連携が未整備なため、データを手動でエクスポート→加工→入力するループが発生している。

この3層を解消するための実務アプローチとして、調査は以下を示唆している。

  • 全社統一の「エネルギーデータ収集テンプレート」を先にExcelで設計し、ツールへの入力仕様と一致させる
  • 開示項目ごとに「ツールで自動集計できる部分」と「手作業が残る部分」を明示的に切り分けてタスクリスト化する
  • ERP連携はAPI開発ではなくCSVエクスポート定型化から始め、まず人的ミスを減らす

得られた結果

2027年3月期から東証プライム上場企業へのSSBJ基準開示義務化が段階的に始まる。この調査が示す課題は「ツール選定の問題」ではなく**「プロセス設計の問題」**であることが重要なポイントだ。ツールをどれだけ高機能なものに変えても、拠点別データの入力仕様が統一されていなければ表計算依存は続く。

他社が参考にすべき点

  • ESG管理ツール導入前に「全拠点共通の収集単位・粒度・締日」を定義することが最優先
  • 「ツール依存率」よりも「表計算依存工数(時間/月)」をKPIとして追跡すると改善効果が見えやすい
  • SSBJ保証に備えて根拠データのトレーサビリティを確保するには、表計算での中間加工ステップを最小化・記録化することが求められる