研究の概要

再生可能エネルギーの大量導入が進んだ電力市場では「マイナス価格」現象が頻発する。供給過剰時に発電事業者が電力を流すための費用を負担する状況だ。この状況下で風力・太陽光はどう行動するべきか、実際にどう行動しているか——ドイツの20年間のデータを用いた実証分析が、支援制度設計の深刻な欠陥を明らかにした。

主な発見・成果

3つの主要発見が政策立案者と事業者の双方にとって重要だ。第一に、マイナス50EUR/MWh以下の深刻なマイナス価格帯でも、出力抑制のインセンティブを持つ風力発電事業者の半数しか実際に抑制していなかった。第二に、太陽光発電容量の約3分の2が固定買取価格(FIT)制度により卸売市場の価格シグナルから遮断されており、出力抑制インセンティブ自体が存在しない。第三に、この低い応答率が「補助金コストを引き上げ、電力系統の安定運用を困難にする」と定量化された。

実務への応用

日本の再エネ普及政策に直接的な示唆を与える研究だ。FIT・FIP制度の設計において、マイナス価格時の出力制御インセンティブを明示的に組み込むことが系統安定化とコスト効率に不可欠であることを示している。電力市場の自由化・再エネ比率向上を推進するGX実務担当者は、卸売市場シグナルへの応答性を確保した支援制度設計を政策提言の根拠として活用できる。また、欧州の失敗事例を先行事例として日本での制度設計改善を先手で図ることが可能だ。