研究の概要
小型モジュール炉(SMR)は原子力発電の新世代として「工場生産による低コスト化」が期待されてきた。しかし本研究は、初期投資コスト削減だけに注目した従来の議論に欠けていた視点——運転・限界コストの高さが電力市場での経済性に与える影響——を正面から分析する。容量市場と卸売エネルギー市場からの収入と政策支援の有無の双方を組み込んだシナリオ分析により、SMRの電力市場における実際の競争力を評価した。
主な発見・成果
最重要の発見は、投資コスト削減の効果が「高い限界運転費用」によって相殺されていることだ。現状のSMRの経済性は先進的AP1000型と同水準であり、ヴォーグル3・4号機のコスト超過が続く場合は同等以上のコスト負担になる可能性がある。さらに将来の電力市場(再エネ比率大幅増加後)では、限界コストの低減が投資コスト削減より大きな経済便益をもたらすことが示された。政策支援なしでは現状のSMRは市場競争力を持ちにくい。
実務への応用
原子力をGXシナリオに組み込む検討をしているエネルギー事業者・政策立案者にとって不可欠な定量分析だ。「SMRは安い」という技術的楽観論を鵜呑みにせず、限界運転コストと市場設計(容量市場・ベースロード保証)の両面を精査することが求められる。日本においてSMR関連投資判断・政策支援設計を行う際のリスク評価基準として活用できる。低炭素ポートフォリオのなかでの原子力の役割を財務的に根拠付けるベースラインデータとして重要。
